mybrain(マイブレイン)700/800

mybrain700の広告から。
mybrain700

そしてこちらがmybrain800の広告。
mybrain800

mybrain700は本体、キーボード、ディスプレイ、ディスクドライブ2台が一体となったデザインで、重量は30Kgでした。重いですね(後述しますが800は50Kg)。ディスプレイは12インチのグリーンブラウン管ディスプレイです。

mybrain 700のスペック一覧表

CPU 8085A
ROM 2KByte
RAM 32KByte or 56KByte + VRAM4KByte
画面 80×24文字/1文字7×9ドット(※1)
フロッピーディスク 2台/各70KByte
入出力インタフェース RS-232C×3

※1 おそらく文字間に1ドットのスペースを取っていてCGROM上では8×10ドットだと思います。

mybrain 700は8bitCPUを搭載していて、トータルで36KByteもしくは60KByteのRAM領域があり、そのうちの4KByteがVRAM用に割り当てられています。電源投入時には2KByteのROMに組み込まれたブートローダによってディスクからシステムの読み込みと起動を行います。
メモリ領域の0000からDFFFまで全てがRAMで、E000からFFFFまではアクセスできない領域のようです。未実装だったのか、システム用に割り当てられていたのかは不明です。
周辺回路には、DMA用に8257、フロッピーコントローラにFD1771、メモリコントローラに3242、CRTコントローラに8275、キャラクタジェネレータにMC6573、RS232C用に8251があります。DMAは画面表示用に使われていたようです。

提供されていたシステムはCP/M1.4とマイクロソフト社製のMBASIC(MBASIC 5.0)で、MBASICにはディスクアクセス用の命令も組み込まれていました。

フロッピーディスクは容量70KByteの5.25inchドライブだったようです。はっきりしないのですが、mybrain 800という別のモデルには5.25inchドライブではなく8inchドライブ(250KByte)が2基搭載されていて、本体とブラウン管、キーボードに加えて8inchドライブで単体での総重量が50Kgほどあったようです。
また、mybrain 700/800は海外向けにも出荷されていて、こちらのモデルは両面倍密度ドライブが搭載されていたようです。

キーボードはJISキーとは別にテンキーとカーソルキーが離れた位置にあります。カーソルキーは十字並びになっています。ただ、どうやらカーソルキーとBASICやCP/Mとの連携がとれてなかったらしく、BASIC上でカーソルキーを動かすとカーソルが動くのですが行編集はできなかったようで、行を編集するにはEDITコマンドを使う必要があったようです。
また、キーリピートはキーの押しっぱなしではなく、リピートキーを押すとキーのリピートがかかるようになっていたり、シフトキーはシフトキーを押しながらキーを他の押すのではなく、シフトキーを押すたびに4段階のモードが切り替わるようになっていたりと、今時のキーボードとは仕組みが違ったようです。

外部入出力端子はRS-232Cのみで、拡張ボードを挿すためのバス端子はありません。その代わりにRS-232C端子が3つもあり、モデムや音響カプラやプリンタを接続できるようになっていました。

MBASICは、BASIC-80をmybrain 700用に調整したもので、各命令の機能は基本的にPC-8001に搭載されていたN-BASICとほぼ同じものだったようです。mybrain700に搭載されているディスクドライブやRS-232CをBASICから制御する命令も用意されていたので、N-BASICよりも命令数は多くなっています。

ところで、mybrain700の資料は書籍/雑誌資料でも少なく、ネット上にほとんどないのですが、古川 享さんがツイッターで次のようにつぶやいていました。

そのパナソニックは、松下電器産業ではなく、綱島にあった松下通信工業で、生産したのはMybrain700と800、8085搭載で、マイクロソフトはBASICとマイクロソフト初のOS、”M-DOS”を提供しました。ある理由でM-DOSは出荷されず。

古川さんのツイートに出て来る「M-DOS」の名前は当時の雑誌記事にも出てきていて、mybrain700用に発売される予定になっていたようです。M-DOSというのはMIDAS (operating system)の事だと思います。
後に同社から発売されたmybrain 3000は日本で最初にMS-DOSが搭載されたマシンだったようですから、この辺の経緯が気になるところです。

[2013/11/26追記]
その後、発売された無かった理由を古川さんがツイートされてましたので引用します。

マイクロソフト自製の8ビットOSは、松下通信工業のMyBrain用に開発されたMDOSが、最初の製品、使用可能なメモリサイズあ、8085ベースで56KBしかなく、OSのサイズが52KBで納品され、4KBのアプリ用メモリを誰が使うんだ、ということで不採用になった。

発売時期は把握出来ていないのですが1979年から1980年初頭くらいのようです。
おそらくビジネス用途として生産されたマシンだと思うのですが、スペックをみるとPC-8001やMZ-80といった8bit系マイコンをギリギリまで強化して最低限必要な周辺機器を一体化したようなマシンです。驚きなのが価格で、mybrain 700が173万円mybrain 800が223万円でした。PC-8001やMZ-80にディスクドライブなどを増設すると100万円近くなるとはいえ、それでも桁違いですね。

余談ですが、松下のマイコンといえばJR-100/200が有名ですが、JR-100は松下通信工業の電卓事業部が生産したものです。後に発売されたmybrain 3000はデータ制御事業部の生産したものでしたから、同じ名前を持つmybrain 700もJRとはデータ制御事業部の生産かもしれません。この辺は推測です。
もともと、松下通信工業は松下電器産業(パナソニック)から分離した別の会社です(2002年には松下電器産業の子会社になっています)が、mybrainにもJRにもNationalの文字がプリントされていますね。

[2014/02/08追記] マイコンライフ1982年2月別冊誌によると、mybrain 850Mという機種もあったようです。スペックは不明です。
[2014/02/18追記] インタフェース1981年7月号に850Mの情報がありました。800Mが8インチFDDモデル、840Mが8インチ両面倍密度FDDモデル、850Mが両面倍密度FDD×2台のようです。840Mと850Mはドライブ数の違い?

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