GIU2V-PCI / 玄人志向
インターフェイス:USB 2.0 + IEEE1394a + 1000Base-T
転送モード:Bus Master
Bus:PCI Rev.2.1 (32bit 33MHz 3.3/5V)
USB 2.0コントローラ:VT6212L / VIA
IEEE1394aコントローラ:VT6306 / VIA
1000Base-Tコントローラ:VT6122 / VIA
対応機種:PC/AT互換機
動作確認マシン/マザーボード:S2895A2NRF Thunder K8WE,S2885ANRF-T Thunder K8W,S2466N-4M Tiger MPX,S1837UANG Thunderbolt
2004年末にデビューした、GIU2-PCIの後継モデル。
前作と異なり、こちらはPCIブリッジをUSB 2.0コントローラのVT6212Lが担当するようになっており、またイーサネットコントローラがVIAのVT6122に変更されている。
VT6122は物理層(PHY)にVitesse(旧Cicada)のSimpliPHYと称するコアを採用した製品で、“とてもVIAの製品とは思えない”あるいは“予想を覆す高性能”と評される程の低コスト・低CPU負荷・高速・高安定性を実現して一部で大変な好評を博しているが、“とてもVIAの製品とは思えない”という評が物語る通り、VIA製イーサネットコントローラは、最初の製品であるVT86C100A“Rhine”の悪評(基本的な設計思想の点ではRTL8139系より余程真面目なデザインであったにもかかわらず、内蔵DMACの挙動に問題があり、且つドライバに致命的なバグが多数含まれていた為、初期段階でそれはもうひどい事になった)が未だに祟っていて、それ故かこのチップも国内では玄人志向のGbE-PCI・GbE-PCI2しかPCIカード製品の実績が無い、言ってみれば“知られざる傑作”とでも呼ぶべき状況となっている。
筆者の個人的な感想としては、このVT6122はGIU2-PCIに搭載されていたRTL8110S(及び同一シリーズに属するRTL8169)とは比較にならない程良く出来たチップで、何より発熱量が大幅に少なく、しかもデータ転送中のCPU負荷が体感出来るレベルで小さい、という点で現状市販されている低価格イーサネットコントローラのベストチョイスと断じて良いと判断している(その割には玄人志向以外のどの会社も採用しようとしないのはやはりVT86C100Aの悪夢のせいだろうか?)。そんなVT6122を搭載しているだけに非常に大きな期待をもって購入したのだが、実はこのカード、実際に各種PCに挿して使用してみたところ、1つ致命的な問題を抱えている事が判明した。
それは、このカードのリソース取得時及びBIOSスキャン時の挙動に何かイレギュラーな要素が含まれるらしい事で、筆者がテストで動かしてみたSUPER PIIIDMEとPC-9821RvII26/N20(こちらは非対応の機種だが、BIOS非搭載ならば動作が期待できるので試した。実は、このカードが動いて欲しかった機種である)所、以下の様な症状が発生して正しく使用できない事が判明した。
まず、SUPER PIIIDMEの場合は4本ある32bit PCIスロットに挿した場合、電源投入時のPOST動作でVGA初期化まで進めないのか画面すら出ずに沈黙し、2本ある64bit PCIスロットに挿した場合には一応起動してWindows上からPnPで認識されるものの、リソースをどんなに空けていても全デバイスが「リソースが足りないので正常動作しない」という状態に陥り、更に言えば他のスロットに複数のSCSIカードを挿していると1枚目はBIOSが認識されるが2枚目からはBIOS ROMが実装されたカードでもそのBIOSが認識されなくなる。
次に、PC-9821RvII26/N20では3本あるPCIスロットのいずれに挿しても起動不能(電源を入れてもピポとも言わない)で、しかもCHANPONZERO2-PCI(PCIブリッジ搭載のスロットエクステンダ)にこれを挿して試すとピポ音がしてメモリカウントは始まるもののメモリチェックが完了してBIOSスキャンに進んだ所で必ずリセットがかかって使用不能となる。
これらの症状から、このカードのPCI-PnPによるリソース取得時の挙動に何か非常に厳しい部分(RvIIについてはチップセットの主要コンポーネントとのリソース競合の可能性も考えられる)がある事と、何故かBIOSスキャン時にROM領域が存在するかの様に応答している可能性が高い事が推測出来るが、前者についてはジャンパレスのカード故にお手上げで、後者についてはVT6122のWOL対応に原因があるのではないかと推測してドライバ付属のDOSツール(eeprom32.exe)でPXE/RPLによるネットワーク起動無効の設定に書き換える等してみたが、どの設定においても挙動に変化無しであった。
なお、RvIIにおけるこの挙動は、同機に搭載されているChampion 1.0チップセットの後裔であるServerSet III HE-SL搭載のS2567U3AN Thunder HEslでも再現されており、どうやらこの系統のチップセット共通の問題であるようだ。
以上からこのカードの利用についてはPCIブリッジ搭載カードのリソース取得が正しく行え、しかもPXE/RPLによるネットワーク起動について正しくサポートされた機種でないと問題が多すぎて使えない可能性が高いと考えられる。
只、このカードは設計が新しくチップセット自体にPCIブリッジに相当する機能が内蔵されているS2466N-4M Tiger MPXで正常するのはともかく、何故か不思議な事に筆者のチェックしたPC/マザーボード中でもかなり入り組んだ構成でリソース面でシビアな状況にあるはずのS1837UANG ThunderboltやS2885ANRF-T Thunder K8W、あるいはS2895A2NRF Thunder K8WEではあっさり正常動作しており、やはりBIOSのPCI Config関連の仕様が規定通り正しく遵守されている必要がある可能性が高い。
ちなみに正常に動作する場合の性能についてだが、各機能とも充分満足の行く性能(但し32bit 33MHzのPCI接続なので全機能の同時動作は転送帯域不足で得られる転送性能が低下する)で、それだけに上記の問題の存在が惜しまれてならない。
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