S1837UANG Thunderbolt / TYAN


CPU Type:Slot 1 (SC242) *2

Chip Set:82443GX (440GX) + 82371EB (PIIX4E) + S82093AA(APIC) / Intel

FSB Clock:66, 75, 83, 100, 103, 112, 124, 133MHz

RAM Module Type:168pin 3.3V PC/66・PC/100 SDRAM DIMM *4

Ext.Slot:x2 AGP *1, 32bit 33MHz PCI *5, 32bit 33MHz PCI/ISA *1

Ext.Onboard Device:AIC-7896 / Adaptec (Dual Ultra 2 Wide SCSI) , i82559 /intel (100base-TX LAN) , ES1373 / Creative (PCI Sound)

Power Supply Type:ATX *2

Board Form:Extended ATX

BIOS: AMI Plug and Play flash BIOS(EASY SETUP)


 故障して戦線離脱したASUSTekのP3B-Fがなかなか戻って来ない事に業を煮やして1999年9月28日に購入した、初のアメリカメーカー製マザーボード。

 姉妹機種として、Adaptec RAID PORT IIコネクタ搭載のS1837UANGRと、440BXチップセット搭載版(それ故RAM上限は1GB)のS1837DLUN-B、それに後述のS1837UANG-Lの3モデルが存在する。

 これは上にも示した通りDual CPU、Intel 440GXチップセット、6本のバスマスタ対応32bit 33MHz PCIスロット、オンボードで搭載されたEnsoniq系PCI Soundチップ(ES1373)とIntel製のLANコントローラ(FW82559)、そして高価なAdaptec製Dual Ultra 2 Wide SCSI コントローラ(AIC-7896)、とMicro ATXに代表される昨今のAT互換機用マザーボードの傾向に反して重厚長大路線を突っ走ってしまった製品で、それ故、当時の一般的なAT互換機用マザーボードの相場からすれば異例な程高価(購入時点での通常の実売価格で約7万円)でもあった。

 無論、この手のWorkStation/Server用マザーボードとしては妥当な価格設定であった訳だが、筆者にとっては購入に覚悟の要るお値段ではあった。

 もっとも、流石にこのクラスになるとその値段を納得させるに充分なだけの設計と実装が実現しており、一目で高い事が分かる様な部品(SANYOのケミコン、挿しやすいコネクタ・スロット類、格好が良く放熱にも有利なメタルパッケージのSCSIコントローラチップ、そしてイジェクトレバーの動きや感触が普通の物とはまるで違うDIMMソケットと、その筋の人大喜びのパーツ類で一杯だ)の使用、余裕を持って美しくまとめ上げられた基板回路パターン、それに隅々にまで検討と配慮の行き届いた基板レイアウトと、先日良いと感じたP3B-Fでさえ、粗雑な玩具にしか見えなくなる程の仕上がりであった。

 なお、この製品にはAWARD BIOSではなくAMI BIOSが搭載されていて、二次キャッシュ内蔵版Pentium III(Coppermine)に一通り対応した2000年4月から長らく更新が停止されていた為に、その間に出荷された最終期のSlot 1対応FSB100MHz版Pentium IIIを挿して起動するとマイクロコードの更新チェックでエラーを返す(BIOSの知らないステッピングのCPUなのだから当然だろう)という問題があったのだが、2001年10月にTYANのサイトで漸く公開された最新版BIOS(配布ファイル名はbx37200f.exe。起動画面で表示されるバージョン名はVer.2.00.10)では当然の様に修正されており、この問題は解決を見ている。

 拡張スロットはご覧の通り一般的なAGP → PCI 1〜5 → PCI/ISAの配置ではなくPCI 1・2 → AGP → PCI 3〜5 → PCI/ISAという珍しい配置となっているが、これはオンボードのATAやSCSIのコネクタ群とAGPのカードの位置をずらす事で、発熱の大きなチップの多いAGPグラフィックカードの冷却に問題が出るのを未然に防止している為で、カードを挿す順番さえ注意すれば全てをフルサイズカードで構成する事も不可能では無い。

 もっとも、一般的な利用では事実上グラフィック専用のAGPはともかくPCIは普通拡張カードの形態をとるSCSIやLANがオンボードで、それも望みうる最高に近い性能の物(しかも、それらはそれぞれ天下のAdaptec製とIntel製であり、余程の事がない限り大抵のOSでサポートされる)が搭載されてしまっているので、下手をすると6本とも使用しないという使い方になる可能性さえある。

 440GXチップセットがサポートするバスマスタPCIデバイスの本数は最大5本で、このボードがサポートするバスマスタPCIデバイス数(バスマスタPCIスロット*6+オンボードPCIデバイス*3=9)を考えると明らかに不足するが、ボード上に特別なPCI to PCIブリッジチップが実装されていない事を考慮すると、これはどうやらSuper I/Oチップ(何故かNational Semiconductor社製)直上のL形に配された4つのPCIリピータ/バスアービタを用いる事で実現しているものと思われる。

 つまり、このマザーボードのレイアウトで言えば下側に4本並んだPCIスロットが、これら4つのチップにそれぞれ対応して制御・管理されていると考えるのが妥当であろう。

 また、この製品でオンボード搭載されたLAN・SCSI・Soundはいずれもジャンパ設定でBIOSではなく機能そのものを無効化する事が可能であるが、Soundに限っては切ると拡張スロットに挿したサウンドカードが何故か認識されなくなるという現象が確認されている。

 これはES1373がオンボードという事でAudio PCI系にはあるまじき事に、PC/PCIを用いたレガシーリソースのハードウェアによる強制取得を行う仕様であるという可能性を示唆する(それ故かTYANのES1373オンボード仕様マザーボード(チップ非搭載を含む)各機種にはPC/PCIコネクタが無い)ものであるが、詳細は不明である。

 このES1373というサウンドチップは、その型番からも明らかな通りあのEnsoniq Audio PCIに搭載されたES1370の系譜に連なる製品であり、いわゆるSPDIFによる音声信号のデジタルアウト機能がチップレベルで実装されている(実際Windows 9x用ドライバにはデジタルアウトに関する設定項目が存在する)筈なのだが、残念ながらその機能はこの機種ではサポートされていない様で、これはハイエンドPCに求められる機能をほぼ完全に搭載しているこのマザーボードでは珍しい不満点の一つである。

 無論、いくら不満があると言っても、この製品が事実上最強に近い機能を満載(SoundはともかくSCSIとLANは後から挿して置き換える必要が殆ど無い(恐らく、その必要が生じる頃にはこの製品の寿命もほぼ終わっているだろう)事を考慮すれば、通常のATXマザーボードでは不可能な6+2=8本分のバスマスタPCIデバイスが使えるのと同義である)をした素晴らしい物である事には変わりはなく、値段とその基板サイズ(拡張ATX規格の許容上限ぎりぎり!)にさえ折り合いがつくならば、440BX/GXを搭載したDual Slot 1マザーボードの一つの頂点を極める製品として強くお勧め出来る。

 但しこれは元来サーバやワークステーション等での使用を前提とする製品なので、当然オーバークロックに対する配慮は少なく、一応FSBはBIOS上で設定可能ではあるものの、最近流行のコア電圧設定機能を持っておらず、また、いわゆるデュアロン構成でのCeleronによるDual CPU動作も原則不可であるので、基本的にはCPUは定格動作が正義、という事になる。

 とは言っても、Windows 98でのシングルCPU動作時のベンチマークテストの結果は相当高速であり、同条件下で並の440BXマザーを上回る性能を叩き出しているのだが。

 どちらかと言えばこれは、高価だが高クロック動作のCPUを入れてワークステーションで用いるのが正解の製品だろう。

 なお、TYANのマザーボードの場合、BIOSでFSB指定出来ても実際にはクロックが変化しない場合がある。

 これは、BIOSにある“オーバークロックの警告を表示する/しない”で“NO”を選択している場合に発生する症状で、“YES”を選択すると大概は正しくFSBが変化する様だ。

 ちなみに、440BX/GXチップの後継となるべきIntel 820/840が自滅したお陰でリピートオーダーが相当数来たらしく、当製品は2000年2月にSCSIコントローラをLSI Logic(Symbios)製53c896 2ch U2W SCSIコントローラに置き換えて(→S1837UANG-L)再出荷されていて、驚いた事には2001年8月末の時点でも新品で入手可能であった。

 最後に付記しておくが、このボードではBIOSが最新のVer.2.00.10であってもS2466N-4M同様にRADEON 8500/8500LE/8500LELEをプライマリVGAカードとして使用出来ない(そもそも起動しない)のだが、同じR200搭載カードでもRADEON 9100の場合には利用が可能となっている。

 このあたりの挙動はかなりデリケートで、一概に言い切る事は出来ないのだが、RADEON 8500系各種カードをお持ちで、しかもこのボードでの利用が出来ずに諦めて/悩んでおいでの方は、ものは試しでRADEON 9100用VGA BIOSへの書き換えを実施なさってみては如何(無論自己責任で、だが)だろうか?


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