Millenium 2MB/4MB / Matrox


Graphic Acceralation Chip:MGA-2064W IS-STORM , IS-STORM R2 , IS-MGA-2064W-R2 , IS-MGA-2064W-R3 / Matrox

RAM:60ns WRAM 2/4MB(増設モジュールにより最大8MB。但しPC-9800シリーズでの利用時は実装量にかかわらず最大4MB)

Bus:PCI Rev.2.0 (32bit 33MHz 5V)

動作確認マシン:PC-9821Xa9/C8、PC-9821Xa7/C4PC-9821Xv13/W16、PC/AT互換機(GA-586HX2MS-5164)、Power Macintosh 8500/132


 1995年に発表されたMatroxの大傑作。GDI描画、特にスクロール性能では最速を誇り、この後ハイエンドカードとして実に二年近くに渡って市場に君臨した。

 筆者が入手したのは裏面のラベルにそれぞれ“MIL/2/NEC”、“MGA-MIL/2/NEC2”、“MIL/4/NEC”、“MIL/2/DELL2”、そして“MIL/4/DELL3”と記載されたOEM品で、それぞれ

MIL/2/NEC:
 MGA-2064W IS-STORM WRAM 2MB RAMDAC 175MHz
 PC-9821Xv13/W16標準搭載

MIL/2/NEC2:
 IS-MGA-2064W-R2 WRAM 2MB RAMDAC 175MHz
 PC-9821X-B03/NEC(PC-9821用純正オプション)

MIL/4/NEC:
 MGA-2064W IS-STORM WRAM 4MB RAMDAC 175MHz
 PC-9821Xt13/C12標準搭載

MIL/2/DELL2:
 IS-STORM R2 WRAM 2MB RAMDAC 220MHz
 DELL向け

MIL/4/DELL3:
 IS-MGA-2064W-R3 WRAM 4MB RAMDAC 220MHz
 DELL向け

であった。

 64bitアーキテクチャのグラフィックコアと、1チップにランダムアクセス可能なI/Oポートとシリアルアクセス専用のポート(事実上RAMDAC専用である)の2つのポートを備える三星電子オリジナルのWindowsRAM(WRAM)を実装し、そして画面に表示されないオフスクリーンメモリをフォントキャッシュに極限まで活用する自社製ドライバに支えられたその強力なGDI描画は当時としては破格のものであって、それに加えて、高クロックのRAMDAC(ドットクロック175/220/250MHz。但しPC-9800シリーズではNEC提供ドライバを使用する限り実装RAMDACの種類によらず175MHz動作となる)搭載による独特の美しい画面が得られるとあっては、当初非常に高価であったにもかかわらず、瞬く間に圧倒的な支持を集めたのも当然といった所か。

 ただ残念な事には、矩形領域の連続転送を重視するGDIに特化したメモリアクセスアルゴリズム故に、この後一気に普及したランダムアクセスを重視するDirect Draw描画においては充分な性能を得る事が出来ず、しかもDirect 3Dに至っては完全にサポート外なので、その種のアプリケーションを実行するには極端に不向きなカードである。

 分かり易く言えば、表計算には好適だがアクションゲームにはかなり不適なカードだという事である。

 このチップのコアアーキテクチャがゲームには不適である、という傾向は次のMillenium II、そして続くMillenium G200にも改善されつつも継承されてしまい、「Matrox=事務用」という認識を人々に植え付ける事となってしまった感がある。

 又、このカードに関してはCAD系に由来するそのコアの出自故にVGA部分の描画性能/画面モードの互換性が低く、VGAレジスタを直接叩いて特殊な画面モードを作り出すタイプのPC(MS)-DOS用ゲームをする向きから嫌われた事は、記憶に留めておくべきだろう。

 それ故にPC/AT互換機でDOSゲームが最後の輝きを見せていた時期においては、ET4000/6000の様なVGAの速いカード(DOS用) + VGA BIOSを切ったMillenium (Windows用)という構成で用いるユーザーが結構いたという話も伝わっている。

 なお、このシリーズに実装されたチップは、上記の通り時期によって少なくとも3つのリビジョンが存在した事が確認されているが、何故かそのモデル名表記が(R2については同一リビジョンでさえ)不統一で、幾分かの謎を残している。

 ちなみに、MilleniumはPCIバス対応のグラフィックカードだがバスマスタ転送は使用しておらず、その関係でこれを純正で搭載していたPC-9821Xt1?系マシンでは、(恐らくチップセット側の制約で)このカードを搭載するスロットのみバスマスタ制御信号線が省略されていて、後日グラフィックカード換装を企てるユーザー達の悩みの種となったりした。

 この初代Milleniu自体は、前述の通りVGA BIOSが切り離せる(ボード上のDIPスイッチで切り替え可能である。PC-9800シリーズへ搭載が容易であったのもこの機能あればこそである)のでグラフィックカードの優先順位問題が発生しにくく、PCIバススロットを備えるPC/AT互換機とPC-9800シリーズの双方においてWindows 98/2000でセカンダリとして使える(どのみち今の所GDI描画以外はセカンダリで使えないも同然なので、GDI描画で高速な上にリソースを喰わないMilleniumは便利である)数少ないカードである上に、Be OSやLinuxをはじめとする非MS社系GUI OSに対する対応度が高いというメリットもあるので、未だに「使える」カードではある。

 また、このカードと後継のMillenium IIについてはPower Macintosh対応のバージョンが存在した関係でそれぞれOpen Firmware規格対応ファームウェア&ユーティリティが配布されており、BIOS書き換えによってPower Macintoshでも利用可能となっている。

 つまり、このカードは公式サポートでPC-9800・Power Macintosh・PC/ATの3つのアーキテクチャに対応した、唯一のグラフィックカードであるという事になる。


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