S2462UNG Thunder K7 / TYAN


CPU Type:Socket A (PGA462) *2

Chip Set:AMD-762(IDG4-2P) + AMD-766 (Viper) / AMD

FSB Clock:200,266MHz

RAM Module Type:184pin 2.5V PC1600・PC2100 ECC Registered DDR-SDRAM DIMM *4

Ext.Slot:x4 AGP *1, 64bit 33MHz PCI *5

Ext.Onboard Device:AIC-7899W / Adaptec (2ch Ultra160 SCSI:S2462UNG only), 3C920 / 3com (100base-TX LAN) *2, RAGE XL / ATi(VGA)

Power Supply Type:ATX-GES

Board Form:Extended ATX

BIOS: Phoenix Server BIOS 2 Release 6.0


 2001年6月にデビューを飾った、AMD初のDualプロセッサ対応チップセットであるAMD-760MPを搭載する、世界初の量産マザーボード。

 サーバマシンからの発生品(S2462NG)を、専用電源(T45X-A4/PC POWER & COOLING,INC.)とセットで2006年3月11日に、SCSIオンボードモデルの中古品(S2462UNG)を2007年5月に、それぞれ入手した。

 AMDにとっては長年の悲願であったサーバ/ワークステーション市場への橋頭堡確保を目的として、TYANとの共同開発が行われたAMD-760MPチップセットは、通常のAthlon用AMD-760チップセットの延長線上に存在する上位モデルであるが、2基のCPUが独立したFSBで接続されるなどその内部にはかなり手が加えられており、事実上完全新規開発品と言って差し支えないだろう。

 開発パートナーであるTYANによる同チップセット搭載マザーボードの第1号として登場したこの製品はAMDにとってもTYANにとっても大きな第一歩であり、しかもリファレンス的存在として決して失敗が許されなかった事から、非常に堅実な設計となっていた。

 特にCPUに給電するVRM相当回路はCPUソケットごとに4相電源構成で、搭載ケミコンもZLを主体にZLH・YXG・MB7とボード上に実装された全数がルビコン製で統一、と2相電源でしかも安物ケミコンが散見された後発の廉価モデルであるS2460 Tiger MPとは比べ物にならない程贅沢な構成となっており、しかもこれに給電する電源ユニットも、通常のATX電源では規格上3.3/5Vの電流量が十分確保出来ないとの判断から、ATX-GES(注1)と呼ばれる24ピン+8ピンの専用ピンアサインを備える電源が開発されており、本当に特別扱い(注2)であった事が判る。

 Tiger MP/MPXを筆頭とする各社製ATX/ATX-12V電源対応AMD-760MP/MPXマザーボードの大半(注3)は、高クロック版AthlonMP搭載で連続稼働させた場合にケミコンの容量抜けなどによるトラブルが発生して使用不能に陥るケース(注4)が少なからず見受けられたのに対し、このThunder K7およびその後継であるThunder K7X・K7X Proに限っては専用電源やSSI-EPS電源とこの贅沢なボード上電源回路の組み合わせが功を奏して、最上位のAthlonMP2800+ Dual構成での過酷なサーバ機としての連続稼働にも問題なく耐え続けている事が知られている。

 無論、この種のトラブルは設置条件や使用状況(注5)も絡んでくるので一概にボードベンダ側を責められないし、Tiger MP/MPX系も量産が進むにつれ、どんどん改修されてVRM周りがコストの許す範囲で強化されて行った事、それに何よりThunder K7/K7X系とTiger MP/MPX系とでは値段が全然違った(注6)事を考慮する必要はあろうが、専用電源とセットで用いられるこの製品が、非常に優秀な耐久性能を備えていた事は確かである。

 なお、このボードは拡張ATXサイズであるが、その一方で1Uラックマウントサーバへの搭載も考慮されており、どうしても背が高くなりやすいRegistered DIMMを斜め挿しにするソケットの採用や、VGA互換グラフィックコントローラ(注7)、100Base-TX LANコントローラ2個およびUltra 160 SCSIコントローラ(注8)の搭載等といった配慮がなされている。


 (注1):“GES”はこのボードの開発コードネーム“Genesis(創世記)”に由来する。つまりこのボードの専用設計である。

 (注2):なお、通常のATX電源では起動しないばかりか、故障を引き起こす危険さえあるので接続してはならない。通常の電源(ただしSSI-EPS12V仕様準拠)を使用したい場合には、SNEのDSRP-C1EPSなどの変換ケーブルが必要となる。なお、これは余談であるが、このThunder K7系の最終型であるThunder K7X ProではATX-GESに代えてSSI-EPS12V電源が採用されている。

 (注3):もっとも、AMD-760MP搭載機種はTiger MPのみであるが。

 (注4):実際、筆者の周囲でも焼損トラブルが結構あり、他社製を含めケミコン頭頂部が膨れたジャンク品に何度かお目にかかった。余談になるが、AMD-760MP/MPXは電源をSSI-EPS12Vに変更してもケミコンが安物でしかも設計が甘いと駄目で、SSI-EPS12V電源対応のIwillのMPX2でも安物ケミコンの頭部が膨れて使えなくなったもの(但し、これがATX12V電源で使用された個体であった可能性は否定できない)に筆者は遭遇している。

 (注5):AMD-760MP/MPX搭載機がその高性能とコストパフォーマンスの良さ故に各所で愛用あるいは酷使されていたのは事実であり、焼損の多発には同価格帯の他機種に比べて稼働時間が極端に長いという事情もある。そのせいかTiger MPXはOpteron登場後の2005年まで生産され続けた。ちなみにライバルであるIntelのXeon搭載マザーボードではこの種のトラブルは殆ど発生していないが、そちらは値段がこのThunder K7並であった事は指摘しておかねばなるまい。要するに、きちんと連続稼働出来るマザーボードを作るには、相応のコストが必要なのである。

 (注6):このボードは単体での発売時の市場価格がSCSIレスのモデルでおよそ8万円前後で、登場時の瞬間最大風速的な初物価格でも4万円を切っていたTiger MP/MPXとは倍程度の開きがあった。

 (注7):定番のATi RAGE XL(VRAM 4MB)がPCI接続で搭載されている。

 (注8):但しSCSIはメーカーオプションで、筆者が最初に入手したボード(S2462NG)には搭載されていなかった。なお、搭載されるSCSIコントローラは、上掲の通りオンボードのUltra 160 SCSIものでは定番であったAdaptec AIC-7899Wである。


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