X1(CZ-800C)


スペック


背景

 「テレビもパソコンもブラウン管を使ってるのに、どうしてそれぞれ専用でしか使えないし売ってないんだ?」テレビ屋の素朴な疑問。これがX1シリーズ誕生につながる全ての始まりでした。なぜ別なのか、コンピュータに詳しい人なら半ば常識のようなものでした。400ライン以上が表示できるものは、そもそもテレビとは走査周波数が全く異なりましたし、200ラインでも近いとはいえ微妙に違っていました。そしてもちろん、入力端子も全く違いました。ブラウン管自体は同じような形をしていても(色にじみなどが嫌われるので、高精細に耐える高級品ではありましたが)全く違うもの、だったのです。
 シャープ社内のコンピュータ屋に聞いても一笑に付されるだけでしたが、その素朴な疑問から出発した新しいコンセプトのパソコンはテレビ屋の手で実際に開発されることになりました。情報部門とは別にコンピュータの開発にゴーサインがかけられた経緯までは不明ですが、当時パソコンの将来像としてあらゆる家電製品を制御するコントローラとなると言われていましたので、おそらくはその実験機として家電からのアプローチをかけてみようということになったのではないかと思います。

 プロジェクトは開発コード"X1"としてスタート。すでに定評を得ていたMZシリーズを参考に、改良できるところは改良し、テレビ屋の納得の行くパソコンに仕上げていきました。発端である「テレビ」と「CRTディスプレイ」との融合は、入力される走査周波数を検知して表示回路を切り替える方式を採用。さらに単なる兼用モニタとしてではなく、テレビ画面とコンピュータ画面を重ね合わせる「スーパーインポーズ」機能も実現しました。
 またゲームに対応してアタリ規格準拠のジョイスティック端子を搭載したほか、これまでサードパーティ製品でしか搭載されなかったPCG、効果音のためのPSGも標準装備としました。横430mmの筐体をデザインし、ステレオコンポと共通に置けるようにも配慮していました。

 1982年秋の発表は、ファンや関係者を驚嘆させました。まずMZではないシャープのパソコンが登場したこと。テレビとCRTを兼用する専用ディスプレイに、スーパーインポーズ画面まで出力できること。さらにそれを録画するためのオプションまで予告されていること。PCGとPSGを搭載していること。パソコンでありながら家電らしく3色のバリエーションがあること。本体だけでなく専用ディスプレイテレビ、キーボードまでが横幅を統一し一体感のあるデザインがされていること。標準のBASICはHu-BASICであること。そして何より、あらゆるパソコンの後継ではなく、突然現れた新機種であること。
 あまりに色モノすぎる孤高のスペックに、皆どうすればいいのかわかりませんでした。いくらMZで実績のあるシャープとはいえ、どこまで本気なのか真意を測りかねてもいました。いやむしろ、「MZがあるからいいじゃないか」と言われてこの一代限りとなっても不思議はありませんでした。

 しかし、先見の明というか無謀というか、魅力的なスペックを気に入って購入する人もそれなりに現れ始めました。ソフトハウスも、すぐにというわけではなかったもののゲームなどが発売されるようになってきました。「いいものはいい、だから使う」と考えるユーザーがけん引役となり、次第に雑誌投稿の数も増え、認知されるようになってきました。それまで取り扱いに迷っていた(?)Oh!MZ編集部も企画ページとして「Oh!CZ」を掲載、反響を呼びます。
 それなりに高価なマシン、クリーンコンピュータを踏襲しながら整備されない開発環境、と不利な条件もありましたが、じわじわファンを増やして後につながっていったのです。

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