CZ-8VC
(X1用RFビデオコンバータ)

 8bitパソコンが現役の頃は、RGBのCRTディスプレイがそれはもう高価で…例えば初代X1の専用ディスプレイテレビ・CZ-800Dは105800円もしたのです。今だとちょっとした本体が買える値段…いやいや、当時も高望みしなければ中級機程度なら新品が買える値段ですよ。親に買ってもらうとして、うまく説得できればいいですけど、全部まとめると高価すぎてまるごと却下される状況ならなんとか本体だけでも…モニタはテレビで代用するから…てな塩梅で、RFコンバータというものを使ってその場を凌いだ人はたくさんいると思います。

 MSXやその他低価格機が普及する時点でメーカーはそのことをよく理解しており、本体にRGBだけでなくコンポジットビデオ出力やRF(…つまりVHFテレビと同じ信号)出力の端子を設けたマシンが数多く発売されました。

 X1は一応そういう入門機であるとか低価格機ではないマシンなのでRF出力とかほとんど内蔵することはなかったのですが、要望があったんでしょうかね…外付けのRFコンバータがこのように純正の製品として存在するのです。

 全ての端子はひとつの面にまとめられています。おかげでなかなかすっきりしたデザイン(まぁ単純な直方体ですけど)にまとまっています。

RGB入力 おなじみ、角形8ピンのデジタルRGB入力です。CRTモニタに接続するためのケーブルをそのまま使います。
テレビコントロール X1特有のディスプレイテレビを制御するためのケーブルをそのまま使います。端子の名前がそうなのでそのまま使ってますが、実際には電源を供給する役割しかありません。
カラー/白黒 表示モードを設定します。白黒だと色に対応する8階調グレーで表示されます。スイッチのポジションが2つありますが、2だとより輪郭を強調したような映像になります。
VHF出力切換 テレビに接続する時の、どこのチャンネルで表示させるかを設定します。大阪地区は1ch、東京地区は2chですね。
映像出力 いわゆるコンポジットビデオ出力端子です。
RF出力 テレビのアンテナ入力に接続する端子です。VHF/UHF混合出力だったはず。
テレビ/コンピュータ 家のアンテナからの入力を使うか、X1の画面を表示するか、つまりはアンテナ切換回路も入っています。ファミコンだとテレビの直前に切り替え器を挟んだと思いますが、これならそんなの不要だというわけですね。
このスイッチだけは反対側の面にあった方がよかったなぁと思うのですが…。
同軸ケーブル/平行フィーダー 家のアンテナ線を接続します。V/U混合してなければ、同軸ケーブルがVHF用・平行フィーダーがUHF用のアンテナからの線ですよね。

 念のため、RF信号について説明しておくと…いやそのうちロストテクノロジーになりそうですので…ちょっと前まで「地上アナログテレビ」と呼ばれていた、昔のテレビ放送信号に変換されたもの…ということになりますね。いわゆるVHFの1または2チャンネルの電波を、空間ではなくケーブルで直接テレビに送り込むわけです。

 VHFというのは今だとFMラジオの周波数帯になります。ラジオで使われているのは90MHzぐらいまでですが、その上の108MHzぐらいまでがテレビの1〜3チャンネルとして使われておりました。欧米だとこのあたりの周波数までラジオとして使われているらしいです(FMワイドとか呼ばれる)。ちなみに4〜12チャンネルはVHFですけど140MHzあたりの周波数になりますので、回路が少し変わってきます。今地デジでも使っているUHFの方が空きチャンネルもたくさんあって使い良さそうな気もしますが、こちらは300MHz以上と高周波のレベルがさらに上がりますので部品の精度やノイズ対策などコスト要因なども採用されなかった理由だろうと思います。

 この地アナ最晩年の機材を考えると、別にビデオ出力があれば他に必要ないんじゃないのとか思ってしまうところなんですが、1980年代前半だとまだビデオ入力端子のないテレビが多数市場にあって、ビデオデッキも安くない時代ですから、そんな「高級」なテレビを買う必要のなかった家庭もまたたくさんありました。ですからRF出力はこの時代にはどうしても必要な機能だったというわけなんですね。

 X1Fのデモ画面より。映像出力から液晶テレビのビデオ入力に接続してみた絵です。
色のにじみというか、縦線が入ったようなノイズがひどいですね。古い機械なので多少傷んでいるせいなのかもしれませんが…。
 …が、白黒モードにしてみるとこんなにクッキリ。この画面は320×200ドットの解像度だと思いますが、そのレベルならRGBディスプレイにもひけをとらない綺麗さですよね。そりゃカラー/白黒切替スイッチがあるわけです。
 今度はX1C/X1Dのデモ画面より。一部分を拡大してみたこの絵が…。
 白黒モードだとこのとおり。煙突の丸とかカラーだと判別つきませんし、鳥の輪郭もぼやけてしまいますが雲泥の差がありますよね…。

 カラーと白黒の解像度の違いは、昔から言われているNTSC信号の弱点なんですよね。元々NTSCというのは白黒映像の規格で、輝度しか含まれていませんでした。これをカラー化することになった時、RGBから輝度と色度に変換して変調した上で混合することにしたわけですが、白黒テレビでもカラー放送を問題なく受像できるよう互換性を保つよう設計されました。でもその方法には無理というか近似値だったりいろいろな工夫があったわけで…単純なRGBではない分変換・逆変換の過程で元通りの色を再現できないことも多々ありました。

 しかしですね、いわゆるS映像信号がそうであるように、混合する前の輝度と色度の信号を分ければもっと綺麗な映像が得られる可能性があるわけです。改造は可能なんでしょうか?

 中身はこんな感じ。見たところディスクリート部品でのみ構成されていて、頑張れば回路図を描くこともできそうです。いや、全部描かなくても輝度信号と色度信号の混合は左上部分だろうと予想が付きますので、そんなに頑張らなくても目的は果たせそうです。

 といっても回路中の信号をそのまま外に取り出しても弱いでしょうから、ビデオアンプ回路を追加して信号を強化する必要はあるでしょう。そこまでやる価値は…あるかなぁ…。

所蔵品一覧に戻る