N8103-65 / NEC (INI-A101U2W / Initio)
転送モード:Bus Master
Bus:PCI Rev.2.1 (32bit 33MHz 3.3/5V)
SCSIコントローラ:INIC-1060P / Initio
対応機種:PC/AT互換機
動作確認マシン/マザーボード:S2885ANRF-T Thunder K8W,SUPER PIIIDME
2001年以降、InitioがOEM品として提供した、Low Profile対応のUltra 2 Wide SCSIカード。
筆者が入手したのは、恐らく日本国内向けでは最大勢力であったと見られるNECのサーバ/ワークステーションであるExpress5800シリーズ向けの純正オプション品である。
2001年と言えば既にUltra 160 SCSIが登場した後(それどころかUltra 320 SCSIの開発が話題になり始めていた時期であった)の話であり、今更この時期に何故新規設計で? と疑問を持たれる方もおられるかも知れない。
当然ながらこれには理由があって、この時期サーバ用大容量バックアップ機器であるDDS(オーディオ用のDATから発展した機器で、DATカートリッジにデータを高速バックアップする)の主力がDDS-3へ切り替わり、転送レート向上を目的として従来のUltra/Ultra Wide SCSIからUltra 2 Wide SCSIへ移行した関係で、ホストアダプタ側もこれに追従する必要があった為であった。
つまり、DDS-3の接続だけが目的(この時期廉価なサーバではATA-HDDの使用が一般化しつつあった)であったから安いUltra 2 Wideコントローラで良く(それでもブート用BIOSは搭載されており、最新のVer.1.06がフラッシュメモリに書き込まれている)、またこの頃からサーバ機ではLowProfile仕様の物が増えつつあった関係でカードの基本設計がLowProfile対応でなくてはならなかった為、Ultra 2 Wide SCSIコントローラ搭載のLowProfile対応カードというSCSIやPCI規格の発達史を知る人間には少々異様に感じられる仕様のカードが求められたものであった。
この際大手であるAdaptecやLSI LogicではなくInitioにオーダーされたのは、恐らくNECがファブレスメーカーであるInitioと様々な関わりがあった為(例えばNEC米国法人はIEEE1394コントローラについて同社と業務提携を行っている)ではないかと推測されるが、無論そんな仕様の既存設計はそれまで存在しなかったから、NECなどによるこの要求に対してInitioは完全新規設計で応えており、このカードはご覧の通り部品面に必要な部品を見事にレイアウトしたかなり美しい仕上がりの製品として出荷されている。
このカードの設計で特徴的なのは、Express5800シリーズなどのサーバ機向けという事もあろうが外部68ピン端子がサーバ向けハードウェアRAIDカードで多用されるVHDIタイプの高密度ミニチュアコネクタ(AdaptecのASC-39320D/-39160・AHA-3950U2/-3940UWD等にも搭載されているタイプの物で、1つのPCIブラケットにつき2*2で最大4基まで実装可能である)となっている事で、レイアウト上の要求とクライアント側の実利(標準的な68ピンコネクタと比べて、このVHDIコネクタはピンの折れ曲がり事故が発生しにくい)とをバランスさせた中々巧妙な設計である。
ちなみに、性能面では基本となったINI-A100U2W(及びその互換カード各種)に準じており、機能的にSCSIバスのターミネーションがオートのみとなってジャンパによる強制ON/OFF設定は不可となっている他は、特に目立った変化は見当たらない。
ただし、NEC向けのこの製品では何故か内部コネクタの#15(GND)・16(DIFFSENS)ピンが半田面で短絡されており、このためたとえ接続機器が全てLVD対応であっても、機器の接続構成次第では強制的にSE動作(短絡を除去すれば当然にLVDで動作する筈だが)となる可能性がある。
なお、このカードは約2万円前後というかなりの高価(もっとも、あのIOI-A100U2Wの新品での販売価格もその前後であったから、大手メーカーのサーバ用オプションという事を考えれば妥当あるいは廉価と言えなくもない)となっているものの、2005年4月末現在でも新品での入手が可能である事を特筆しておく。
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