PC-9821As2/U8W


CPU:

DX4 ODP 100MHz → AMD-X5-133ADZ (Am5x86-P75) 133MHz

Level 2 Cache:

128KB * 2 = 256KB

RAM:

5.6MB(内蔵)+ 8(専用ボード)= 13.6MB → 5.6MB(内蔵)+ 8(専用ボード)+ 16(JEDEC 72pin 36bit SIMM)* 2 − 1 = 44.6MB → 5.6MB(内蔵)+ 8(専用ボード)+ 8(JEDEC 72pin 36bit SIMM)* 4 − 1 = 44.6MB → 5.6MB(内蔵)+ 8(専用ボード)+ 32(JEDEC 72pin 36bit SIMM)* 3 + 16(JEDEC 72pin 36bit SIMM)* 1 − 1 = 124.6MB

HDD:

340MB (IDE) + 730MB(SCSI-2)→ 2.1GB(SCSI-2)

FDD:

3.5inch 3 Mode * 1 → 3.5inch 3 Mode * 2 → 3.5inch 3 Mode * 2 + 5.25inch 2 Mode * 1

 

拡張機器:

(グラフィック・アクセラレータ)

 GA-1280A / I-O DATAPower Window 964LB / CANOPUS

(サウンドボード)

 Sound BLASTER 16/98 / Creative → PC-9801-118 / NEC → MPU-PC98II / Roland → S-MPU/PC / Roland

(SCSIボード)

 HA-55BS4 / TAXANPC-9821A-E10 / NECMDC-926Rs / 緑電子 → SC-98III / I-O DATA

(PCMCIA拡張ボード)

 PC-9821XA-E01 / NEC → REX-9851 / RATOC


 「Asを商品価値のある内に後輩にでも売り払ってAs2を買う」という作戦に無事成功し、1996年1月15日に再び日本橋に出向いて買ってきたのがこの機種である。

 これはWindows 3.1プリインストールモデルで、それ故に新古品処分とされていた物だった。

 実は日本橋をあちこち探し歩いている際に同じくWindows 3.1プリインストールモデルの処分品でPC-9821Xs/U7Wもあったのだが、CPU/メモリ周りが幾ら高速でもローカルバススロットが無いのでは、早晩拡張に困る時が来る事が目に見えていたので、あえてAs2を購入した。

 Xsの場合セカンドキャッシュが純正品のみしかなかったので中古で見かける事は殆ど無く、他にも通常のPentium ODPが使えない等、結構厄介な問題があちこちから聞こえて来た事を思えば、この判断は大正解だった。

 話を元に戻すと、流石というか同じ動作クロックでも本来RAだのDAだのの為に作られたPC-9801-61 SIMM(注1)を搭載したAsと、70nsの汎用JEDEC SIMMを採用したAs2とではメモリの応答速度がまるで違っており、当初As時代に比較して1MBメモリが減ったにも関わらずWindowsの動作速度には大差が無かった。

 そしてセカンドキャッシュを128KB積んだあたりから一気に高速化が始まり、強力なローカルバスグラフィックアクセラレータ(注2)の搭載、メモリの増設、CPUの換装(注3)、そしてSCSIボードの交換(注4)でこのAs2は一つの頂点に到達した。

 Asではメモリ周りが足を引っ張って、そしてXsではローカルバススロットが存在しない為にこのレベルには到達できない事は明白だったから、1996年1月の判断は正しかったという事になろうか。

 ちなみに、AMD-X5-133ADZを取り付けるに当たっては、単純に電圧降下下駄に挿してからAs2のCPUボードのCPUソケットに挿して起動しようとしたのだが、ハングしてメモリカウントも始まらなかった。

 で、一晩頭を冷やす事にして就寝し、翌朝再度起動して各チップをチェックしてみたら何故かCPUボード裏の486SXが熱い。

 これは要するに、既存CPUのスリープ機能が下駄に存在せず、それ故2つのCPUが同時に動作しようとしていたのがトラブルの原因であった。

 解決策は一つ。何らかの手段でもって裏側の486SXを黙らせられれば良い。

 その時一瞬脳裏に「そういえば、486ODPソケットにはGNDに落とせば既存CPUを黙らせられるピンが有ったよなー」という想念が浮かばないでもなかったが、Intelの関係資料を調べるのが面倒なので結局裏側の486SX 33MHzを引き剥がしてしまう事にした。

 要するに、CPUボードに表面実装されている486SXの足を丁寧にニッパで切り飛ばしてから半田鏝を当てて残った足を綺麗に除去しただけの事なのだが、結果は大成功。物の見事に(注5)As2は起動に成功した。

 結論を言えば、ジャンパを飛ばしてCPUを眠らせるというのは無駄に電気を喰うチップを乗せておくという事であって性に合わないので、この方法が唯一の正解だったという事になろうか。

 なお、この機種の場合As同様にPC-9801-86相当のサウンド機能が標準で実装されているのだが、Windowsで音が途切れるのを嫌ってPC-9801BXの時に入れていたSound BLASTER 16/98を26互換機能を殺して入れ、これに純正オプションのWave BLASTER IIを取り付けて使っていた。

 この後音質面の不満(注6)とDirect Xのサポート問題から新製品のPC-9801-118に切り替えたが、118音源のFM部分は一応YMF-297搭載という事で86音源のYM-2608とある程度の互換性があり、PCM音源を使わないソフトについてはDOSゲームが大体鳴る、というメリット(注7)もあった。

 というか、この頃はまだPCM音源をFM音源に同期させて演奏するゲームが少なく、そこに問題が潜んでいる事に気付かなかっただけの話なのだが。

 この時点で大概の不満は解消されていたが、この時期、日付で言えば1996年9,10月頃に私を一つの衝撃が襲った。

 事の発端は「NECパーソナルコンピュータ PCシリーズ 総合プロダクトガイド 1995-Autumn」なる一冊のカタログだった。

 これはその名の通り、1995年秋の時点でのNEC製PCシリーズのハード・ソフト双方の現行製品を網羅した総合カタログで、アーキテクチャ的には大勢は既に9821系、それもX-Mate主体に移行していたが、ソフトウェアの互換性維持の為にPC-98GS、PC-98DO+、PC-H98、そしてSV-H98の各本体及び対応周辺機器群が残存(注8)しているという、ある意味一番凄い時期の物だった。

 この本をゲームの為にWindows 95が動く新しい98が欲しいというサークルの先輩(Pzi氏)に参考になればと貸したのだが、しばらくすると

「決めた、俺はPC-H98 model U105を買うぞ!」

というこちらの想像の遙か斜め上を行く凄い答えが彼から返ってきた(苦笑)。

 それに対して、ゲームの為にWindows 95が動くマシンが欲しいと言っているのにいくら何でもそれはマズい、それはないだろうという事でその場にいた面々がよってたかって説得してどうにか方向修正させる事には成功したのだが、それでもPC-9821Anがぎりぎりの妥協点になってしまった。

 問題はその後だった。

 私の案内で行った(注9)日本橋の祖父地図の中古コーナーで首尾良くAn/U2を調達した先輩は、件のAnを我が家に持ち込むと簡潔にこうのたもうたのだ。

「セットアップ、よろしく」

 かくして我が家でAs2の横にAnを置いて作業を開始したのだが、この時私の心の中で好奇心がむくむく湧いて来たのが悪かった。

 「Anと強化済みAs2ってどの位性能差があるのだろう?」

 そう思ってしまったのだ。

 無論、本式のPentiumを搭載し、メモリバス幅が64bit化しているAnの方があらゆる意味で高速なのは自明の事だったのだが、同時期に同じメーカーの設計した、CPUとメモリ周り以外はほぼ共通設計の機種同士であるから、その速度差はかなり正確にCPU+メモリバス周りの速度差を反映した結果になる筈だった。

 実際、Windows上で実行したベンチマークはその大半が予想の範囲内に収まる結果を出した(注10)のだが、この際、たった一つだが理性では納得は出来るものの感情的に許し難い性能差が現れた項目を発見してしまった。

 それは、MPEG 1のムービーデータ再生だった。

 これだけは、Anで再生する分には例え9821固有グラフィックでWindowsを起動していても殆どコマ落ちしないが、As2では何をどうしてもコマ落ちが多発する事が判明したのだ。

 今にして思えば、それはPentium系と486系のFPUの演算能力の差(注11)がストレートに出ていただけの話なのだが、この時の悔しさは多分一生忘れられそうにない。

 何しろ、Pentium 133MHzを搭載した最新のFMV DESKPOWERには圧勝出来たこのマシンが、いわゆるP54C系列では最古のマシンであるAnには勝てなかったのだから。

 まぁ、これは今思えば単に当時のFMVの遅さが際立ったものであっただけの事であってそれ以上でも以下でもない(注12)のだが、それでも悔しい事に変わりは無かった。

 この後、この差を埋めるべくベースクロックの向上実験(注13)をしたが、あまり速度が上がった気にはならなかった。

 もっとも、問題のコマ落ちについては34MHz駆動時に目に見えて減ったので、やはりMPEGのデータ展開ではCPU(or FPU)パワーのほんの僅かな不足が大きく響いていた様だ。

 そしてこのAs2の時代に最後のとどめをさしたのは、またしてもWindows NTだった。

 この頃にリリースされたWindows NT 4.0には通例通り愛用のPower Window 964LBのドライバが含まれていなかったのだが、あろう事かメーカーのカノープスが

 「98ローカルバス用グラフィックアクセラレータのNT 4.0ドライバは書いても速度が出ないのでサポートしない」

 などというとんでもない宣言(注14)をしてしまったのだ。

 加えて、動くと思っていたSCSIボード(MDC-926Rs)のNT3.x用ミニポートドライバが誤動作するに至っては最早As2にとどまり続ける理由もなくなった(注15)訳で、前回同様後輩にこのAs2を売り、その売却代金を利用して新しい98を買うのが良かろうという事になった。

 ちなみにこの売り先となった後輩はAsを買ってくれたK.Y.君で、彼の所には2台続けてウチから98が行く事になってしまった。

 なお、このAs2はK.Y.君のもとで約1年10か月を過ごした後、彼のXt13/K12本格導入(99/10)時に一旦私の元に戻り、後輩のA.S君に再転売したが、その後約1年を経て三度我が家に舞い戻る事と相成り、現在は我が家で予備機となっている。

 尚、このAs2には物理的には6 + 8 + 32*4 = 142MBまでメモリ搭載が可能だが、論理的にはメモリ上限は126MB(124.6MB)までしか認識されない事を申し添えておく。


 (注1):搭載チップを見ても明らかな通り、アクセスタイム80ns〜100nsで486の相手としては低速に過ぎた。

 (注2):Power Window 964LB 2MB版。当時は14インチCRTを使っていたので2MB版で良しとしていた。無論、本当は4MB版が欲しかったのだが。

 (注3):購入時に一緒に入手して取り付けたDX4 ODPから、電圧降下下駄+AMD-X5-133ADZに交換し、4倍速133MHz駆動へスピードアップした。

 (注4):純正のPC-9821A-E10から最強のCバス用バスマスタ転送SCSIボードであるMDC-926Rsへ交換した。ちなみにこの頃筆者は某所の草の根BBSに参加していたので、モデムのパフォーマンス向上につながるこのボードの高速シリアルポートは非常に重宝していた。

 (注5):当然というべきか、周波数がCPU速度に比例する様になっている起動音はかなり甲高い音になった。

 (注6):そもそもSound BLASTER 16/98にはLine Out端子が存在せず、音声信号出力はボード上の可変抵抗によるボリュームを通る様になっているので、音質面で根本的に難がある。

 (注7):ちなみにこれは非PnP対応のMate Aでの話であり、同じ非PnP対応モードでもMate Xの場合には同じDOSゲームでFM音源部が鳴らなかった事を確認している。また、搭載チップがYMF-297なのでCSS機能が省略されており、この機能で台詞をしゃべらせる様なソフトではそこだけ鳴らない、という症状も見られた。

 (注8):このあたりにはPCのトップメーカーとしてのNECの矜持と責任感が見えて興味深い。ちなみに当時カタログに残されていたPC本体の殆どは各シリーズ固有の機能の殆どを網羅していたためか、PC-H98 model 105/U105の様な各シリーズのハイエンドモデルが占めていた。

 (注9):実の所は彼が間違ってH98を買ったりしない様に監視・監督するのが目的だった(苦笑)。

 (注10):この時の各種ベンチマークテストで当時AMDが主張していたAMD-X5-133ADZ=Am5x86-P75のP75、すなわちPentium 75MHz相当という性能指標が概ね正しい事が確認出来た。

 (注11):MPEGデータ再生の場合、これが多用される。ちなみに、Pentiumは演算ユニットの倍増で同クロックの486系と比較してFPU性能が2倍程度に引き上げられており、例え90MHz駆動でも486コアのCPUを180MHz以上で動かしでもしない限りFPU性能で負ける事が無い様になっている。

 (注12):これは当時のFMVが採用していたマザーボード(V50LA)に搭載のALi製チップセット(Alladin II)が致命的なまでに低性能であったのが原因らしく、後に同じCPU、同じメモリ、同じHDD、同じグラフィックカードでマザーボード(MS-5163)だけを新調して組み直した所、いきなりベンチマークで2倍の性能を叩き出した。要するに、当時のFMVは「額面上のスペックは大変結構だが、実際の性能は最悪」という粗悪品だった訳である。ちなみに、筆者は後日同じマザーボードを使用するFMV-TOWNS Model SBを入手したが、CPUをI-O DATAのPK-K6HX400(K6-III 400MHz搭載)に交換してもまるで体感性能が向上せず、改めてこのマザーボード/チップセットの性能の劣悪さを認識させられた事であった。

 (注13):34MHzと40MHzで試験を実施した。結論は「34MHzだとL2Cを有効に出来るので速度が上がるが、40MHzだとL2Cが動作しないので40*4=160MHzでもL2C有りの136MHzに劣る」となった。なお、この時実装L2CのSRAMチップのカタログスペックから逆算して約36MHz程度まではFSB向上が可能との結論を得たが、72MHzなどという都合の良いクロックのオシレータが入手出来なかった為、これについては未確認である。

 (注14):怒り狂ったユーザー達(大枚叩いて高価なボードを買ったのだから当然だと思うが)の声に押されて、流石にこの宣言は撤回する羽目に陥った。ちなみに、同社は「パフォーマンスが出ない」と言ったが、後日提供されたドライバを使用した限りでは、PowerWindow 964LBはWindows NT 4.0でもMate A系で使用可能なグラフィックボード中最強であった。

 (注15):Windows NT 3.51のままでAs2を使うという選択肢もあったが、代替GUI環境があるのにわざわざ史上希に見る劣悪な操作性のGUIであるプログラム・マネージャーを使い続ける事は、当時の私にはとても出来なかった。


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