Revolution IV-FP for Mac / Number Nine Visual Technology


Graphic Acceralation Chip:Ticket to Ride IV (T2R4) / Number Nine Visual Technology

RAM:7ns SDRAM 16MB + 8ns SDRAM 16MB

Bus:PCI Rev.2.1 (32bit 33/66MHz 3.3/5V)

動作確認マシン:Power Macintosh 8500/132PC-9821Xv13/W16、PC-9821RvII26/N20、PC/AT互換機(S1837UANG ThunderboltSuper PIIIDME


 1994年のImagine 128に始まる#9製オリジナルグラフィックアクセラレータチップの最終モデルとなってしまったTicket to Ride IV(T2R4)を搭載する、Revolution IVシリーズのPower Macintosh対応版。

 本来はこの時期(1998)に#9の親会社となっていた、SGIのSilicon Graphics 1600SWという17.3インチLCDモニタとセットで販売されていた製品で、当然Power Macintosh対応のPCI版だけではなく、PC/AT互換機用の2x AGP対応版及びPCI版も存在した。

 実質的に高解像度がウリの液晶モニタ専用なので、16MB版も存在したPC/AT互換機用リテール版と異なり、FlatPanel対応版のメモリはいずれもフル実装の32MB版のみであった。

 PC/AT互換機用はカード単体で販売されていたものに1600SW用36ピンOpen LDIインターフェイス関係の部品を追加搭載しただけ(というか、元来このインターフェイスを実装する事を前提に基板が設計してあって、カード単体で発売したバージョンではそれが省略してあったという方が正しい)であるが、元来単体売りの予定が無かった(らしい)Power Macintosh版は、その設計生産がドイツのFormacに委託されており、同社のProformanceシリーズと良く似た、言ってみれば#9らしからぬ印象の仕上がりとなっている。

 実際、Power Macintoshにこのカードを挿して、同社が提供しているProformance用ProGraphicsソフトウェアをインストールしてみると、このカードが同社では“Proformance 2B”として扱われていたらしい事がライブラリ名から見て取れるし、Mac OS 9.1上の“Appleシステムプロフィール”では“formacGA11”として認識されていて、#9自身が自社サイトで配布していたファームウェアのファイル名にもGA11という名が使われていた。

 また、ついでに書くと、Macで#9純正のHawkEyeユーティリティをインストールした際に機能拡張マネージャ上に姿を現す専用機能拡張ライブラリの名前を見る限りでは、Revolution IVの#9社内呼称は実は“Imagine/4”であった様だ。

 これについては、Formacが販売したこのカード(但しOpen LDIモジュール非搭載)の名称が“Imagine4”であったという話もあるので確言出来ないのだが、一つの記録として書き留めておく。

 このMac版の基板は、Yosemiteこと青白G3 Mac(初代)の66MHz 32bit PCIスロットにも対応する3.3V/5.0V両対応版PCIカードエッジコネクタを備える(PCIバス搭載Power Macで3.3V 33MHzスロットを搭載するモデルが存在しない以上、3.3V 66MHz駆動に対応するが故にPCIバスコネクタの3.3V対応エッジ掻き取りがあったと考えるのが妥当であろう。事実、このカードは66MHz対応のPCIスロットに挿した方が明らかに性能が上がる)他、PC/AT版ではメイン基板に直接実装されていたOpen LDIデジタルRGBインターフェイスもサブ基板に専用周辺回路ごと実装される(つまり、液晶モニタ用のデジタルRGBインターフェイス規格の標準が別のものになった時にもサブ基板の交換で対処出来る。ちなみにPermedia 3搭載のProformance 3にはこれとピン互換のサブ基板が実装されている様だが、交換出来るのかどうかは定かではない)など、将来的な拡張に備えた設計であった。

 また、このカードの場合メイン基板の両面に16MBitのチップが8枚で16MB分ずつSDRAMが実装されているのだが、何故かT2R4チップの実装されている表面のチップは8ns、裏面は7nsの同一型番のチップとなっていた。

 SDRAMにおいては、同一メモリインターフェイス上に異なる速度のチップを並べるのはシステムの安定を阻害する事が多いから、あるいはこのカードの場合、フレームバッファとワークエリア(フォントキャッシュやZバッファなど)で16MBずつ独立したメモリインターフェイスを備えるという回路構成になっているのかも知れないし、もしかしたら基板の裏面実装分については信号遅延を考慮してより高速なチップが奢られている可能性も否定出来ない。

 このあたりは#9が公開した仕様を見る限りでは今ひとつ判然としない部分なのだが、何しろT2R4チップ自体がその仕様書で示された機能を充分生かし切れない内に生産完了となってしまった(発表時に示された、WRAMによる256bit高速メモリバス接続&外付けRAMDAC接続機能を生かしたハイエンドカードは、結局生産されずに終わった)位なので、恐らく今後も謎のままだろう。

 なお、このカードは残念ながらMac OS Xに対応したドライバが提供されていない為、Macで使用する限りMac OS 9.xまでの対応となる。

 言うまでもなくこれはMac用のカードなのだが、PCIのサブベンダIDが異なり、フラットパネルインターフェイスを持ち、VGA-BIOSを持たない(ちなみにMac用のOpen Firmwareのファイルサイズは64KBで、PC/AT互換機用のVGA-BIOS(32KB)の倍のサイズがある。PC/AT版のRevolution IVにMac用Open Firmwareを書き込もうとすると失敗するのは、これが原因である)他はAT互換機対応版Revolution IVと大差ない(無論基板設計は異なるが、論理回路的にはFlashメモリを除きほぼ等価である)為、起動時にVGA−BIOSを要求しないWindows 2000では、Microsoftが標準搭載のInBoxドライバとしてImagine128/T2R系チップ搭載カード用ドライバを提供してくれているお陰もあって、PC/AT互換機用(ドライバをインストールすればPCIバススロット搭載のPC-9821シリーズでも)セカンダリディスプレイカードとして利用可能となっている。

 私自身はPC/AT版のRevolution IVを持っていないので断言は避けるが、少なくともこのWindows 2000環境では、GDI系は非常に快適であったがDirect DrawとDirect 3D機能については壊滅であった。

 T2R4チップは仕様的にはOpen GLを睨んでVLIWによるディスプレイリストプロセッサを実装し、少なくとも同時代のライバルであったMGA-G200と同程度以上の3D描画機能を備え、また秒間30フレーム再生を可能とするMPEG2動画再生支援機能も持たされていた筈なのだが、残念ながらWindows 2000に添付されたMS製ドライバではこれらの機能やハードウェアオーバーレイは、いや、それどころか色特性のガンマ曲線コントロール機能さえ一切実装されていない様だ。

 もっとも、これはマイクロソフトが既に無くなった会社のチップの為のドライバをほぼ0から開発して提供している(これが#9自身が手がけたWindows 9x/NT用ドライバより余程良く出来ている、というのは非常に考えさせられる部分である)事を考えると文句を言ってはバチが当たるというものである。

 無論、叶う事ならガンマ値調整だけはどうにかしてサポートしておいて欲しかった部分ではあるのだが。

 なお、Windows 2000でこのカードを使うと画質の傾向、特に色合いが他の#9製カード(例えば前作に当たるRevolution 3Dなど)とかなり異なって見えるが、Mac上で純正ドライバをインストールして使ってみると、Windows上で見るのと比べてもはっとさせられる程に美しい画が出ている(恐らく、そのドライバ/ファームウェア、それにガンマ値(WindwosとMacOSではデフォルトのガンマ値が異なる)に最適化した回路設計なのだろう)上に専用ユーティリティによる画質調整機能も利用可能となっているから、Windows上での発色についてはこれ以上記さないでおこう。

 ともあれ、全般的に見ると非常にシャープで美しい画の出るカードである。

 当然ながらこのカードには起動時のBIOS画面が存在せず、故に恒例の起動メッセージも存在しない。


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