S2915A2NRF Thunder n6650W / TYAN


CPU Type:Socket 1207 (Socket F) *2

Chip Set:NFP 3600 + NFP 3050 / nVIDIA + μPD720404 / NEC

Memory Clock:200,266,333MHz

RAM Module Type:240pin 1.8V PC2-3200・PC2-4200・PC2-5300 ECC Registered DDR2-SDRAM DIMM *4*2

Ext.Slot:PCI Express x16 *2, PCI Express x8 *2, 64bit 133MHz PCI-X *1, 64bit 100MHz PCI-X *1,32bit 33MHz PCI *1

Ext.Onboard Device:88E1121 / Marvell(GbE PHY) , TSB43AB22A / Texas Instruments (IEEE1394) , ALC262 / RealTek (High Definition Audio Codec)

Power Supply Type:SSI EPS12V

Board Form:Extended ATX

BIOS: Phoenix BIOS


 2006年10月末に発売が開始された、Thunder K8WEの後継となるDual Socket F対応マザーボード。

 SASコントローラを標準搭載するS2915WA2NRFがバリエーションモデルとして存在し、前作Thunder K8WEのOEM品がHewlett-Packardのxw9300に採用されたように、これのOEM品が同じHewlett-Packardの後継機種であるxw9400と、富士通のCELSIUS X840に採用されている。

 対応CPU・メモリの種類が異なるが、チップセットを構成するNFP 3600とNFP 3050の2つのチップ(注1)がそれぞれ1基のCPUをサポートし、相互間の通信をCPU内蔵のHyper Transportに依存する独特の構成はS2895から変更されておらず、同機種の正常進化形と呼ぶべき構成・実装となっている。

 ただし、バスや拡張スロット構成などを巡る状況の変化から、PCI-Xの位置づけが一歩後退し、CPUのHyper Transport直結ではなく、NFP 3600がサポートする4レーン分のPCI Expressインターフェイス経由で接続されるようになっている点と、実装されるPCI ExpressスロットがNFP 3600+3050の機能(注2)を生かしてPCI Express 16x 2本と8x 2本(注3)という構成となっている点、S2895では各チップで1チャネルずつ分担してサポートされていたGbEが、NFP 3600単独で2チャネルともサポートするように改められた(注4)点、それにバリエーションモデル(S2915WA2NRF)にオンボード搭載の高速ストレージインターフェイスが2ch Ultra 320 SCSIから8ポート SASに変更された(注5)点の4点で大きな変化が生じており、S2895からの環境移行では拡張スロット構成の相違(注6)から悩まされる場合がある。

 具体的には、オンボード搭載されているSATA/ATAインターフェイスのBIOS空間での領域占有量が過大であるらしく、これを生かしたままでのSCSI BIOSの組み込みが至難、という問題があり、筆者の場合はオンボードのSATAを全て無効化し、かつ玄人志向のSATA2RAID-PCIXをBIOS無効設定で挿してこれで代用することで、ようやくLSI 22320に接続したSCSI システムHDDと、SATAデータHDDの共存に成功する、という有様(注7)であった。

 ただし、SASをシステムディスクに使用する場合にはこうした問題は発生しておらず、筆者が試した3種のSASカード全てで問題なく内蔵SATAインターフェイスとの共存が可能であった。

 このあたりを勘案すると、これはPCI-XからPCI Expressへ、SCSIからSASへの移行の端境期なればこその悩みと言うべきで、このボードでシステムを組む場合にはSCSIのシステムHDDに未練を残さず、高速ストレージ系インターフェイスカードとしてはPCI Express対応のSAS RAIDカードなどを使うべきだろう。

 むしろこのボードは、S2895では6本しか使えなかった拡張スロットが7本とも使用可能となった分、拡張カード構成の自由度は向上しており、そのあたりのカード代替に伴う様々なコスト増さえ容認できるのであれば、拡張性やその自由度の点でS2895を大きく上回る。

 ただし、このボードもTYAN製マザーボードの例に漏れずAMD/ATi製グラフィックチップ搭載グラフィックカードのVGA BIOSとの間に相性問題があり、筆者の環境では最新のBIOS Ver.3.00でRADEON HD5770・HD5850を利用する場合、PCI Express x16 #1スロット(CPU寄り)にそれらのカードを1枚挿した状態ではVGA BIOSが認識されず、それらのカードは必ずPCI Express x16 #2スロット(PCI-X寄り)に挿す必要がある。

 前世代のRADEON HD4850まででは特にこのような症状は発生していないため、これは恐らく3系統出力に対応するための機能拡張が原因と推測される。

 なお、このボードは公式にはデュアルコア搭載Opteronまでの対応とされるが、最新版BIOSではShanghaiコアのクアッドコアOpteronへの対応を示す起動メッセージが表示され、筆者が試した範囲でも、一部のACPI対応OSでのシャットダウン/再起動に若干難がある(注8)もののBarcelonaコアのOpteron 2347×2での動作が確認できている。

 ちなみに、このボードは電源回路の仕様の制約から6コアのOpteronには電気的に対応しておらず、そちらの利用に当たってはS2915A2NRF-E・S2915WA2NRF-Eという後継モデルが必要となる。


 (注1):NFP = nForce Professional 。前世代のnForce Professional 2200・2050がnForce 4 Ultraの派生モデルであったのと同様、こちらもPCI Expressのサポートしているレーン構成やそれ以外の機能から、 実体としては同時期のnForce 570SLIの派生モデルと考えられる。

 (注2):いずれのチップもPCI Expressで最大28レーンまでサポートしている。これにより、各チップでそれぞれ16x 1本、8x 1本をサポートする。

 (注3):2本のPCI Express 8xスロットは共に16x用のコネクタを実装する。

 (注4):これによりCPU単発時でも2チャネルのGbEが使用可能となった。

 (注5):このSASコントローラ(LSI Logic LSI1068)はNFP 3050のPCI Expressインターフェイス4レーン分を使用して接続される。つまり、S2915WA2NRFはCPU単発構成の状態ではオンボードSASコントローラが利用できない。

 (注6):PCI Express 8xが2本実装された代償として、S2895では2chで2+1=3本あったPCI-Xバススロットが1chで2本となり、1本減った。これによりPCI-X対応ストレージ系カードを複数利用していたような場合、それらのカードを流用する限りはフル性能の発揮が困難(PCI-Xスロットを2本とも利用する場合、バスクロックが133MHzから100MHzに引き落とされる)となった。これはPCI Express−PCI-XブリッジチップであるμPD720404側の制約によるもので、2ch構成とするにはPCI Express 8x接続をサポートする姉妹機種のμPD720400を搭載する必要がある。また、従来一方のPCI-Xチャネルのスロットに高速ストレージ用インターフェイスカードを挿し、もう一方のチャネルに3.3Vスロット対応のPCIサウンドカードなどを挿して利用していた場合も、その移行に一工夫必要となる。

 (注7):この点では、SCSI BIOS組み込みが難しいことで定評のあった前作S2895と比較しても、より厳しく扱い難い。もっとも、本文中にも記したとおり、SCSIカードではなくSASカードを挿して使用する分には特に問題が発生していないので、筆者としてはSCSIではなくSASの使用を推奨しておく。なお、ここで記した構成ではSATA接続の光学ドライブからのブートが不可なので、OS新規インストールにはパラレルATA接続かUSB接続の光学ドライブ(DVDドライブなど)と場合によってはいわゆるF6ドライバ組み込み用フロッピーディスクドライブ(所謂レガシーなFDDインターフェイスに接続するもの。USB接続ではWindows XPで認識されなかった)を用意する必要があった。

 (注8):Windows 7などでシャットダウン時に正しく電源がオフにならない、再起動時に正しくPOST動作が始まらない、といった症状が発生している。


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