SATA2RAID-PCIX / 玄人志向


インターフェイス:Serial ATA II (300MB/s) * 4 Channel

転送モード:Bus Master

Bus:PCI-X 1.0 (64bit 133MHz 3.3V)

SATAコントローラ:SiI3124 / Silicon Image

対応機種:PC/AT互換機

動作確認マザーボード:S2885ANRF-T Thunder K8WS2895A2NRF Thunder K8WES2663


 2004年秋より、玄人志向から同社の分類で言う所の“キワモノ”扱いで、つまり殆ど完全なノンサポート扱いで限定的に発売されているPCI-X対応のSATA II RAIDカード。

 玄人志向公式サイトで製造が台湾のAVLABである事は明らかにされているものの、何故かAVLABサイトにはこの製品に関する情報掲載が無い、といういかにも“キワモノ”らしい位置付けの製品である。

 SiI3124はSilicon Imageが開発したSATA対応コントローラとしてはSiI3112/3114に続く2世代目の製品で、1chあたり300MB/sの高速転送やネイティブコマンドキューイング(NCQ)といったSATA II規格で採用された各種機能をフルに実装しており、前世代のチップとは比べものにならない位複雑化している。

 これは、SATA IIの機能強化が来たるべきSAS(Serial Attached SCSI)を睨んでSCSIの先進的機能を簡略化しつつ取り込んで行われた事に由来し、故にこのチップはATAコントローラの延長線上にありながら限りなくSCSIコントローラに近い内部ロジックを備える様になっているのである。

 それは、稼働時のCPU負荷率の低さや、Sil3112/3114と比べて明らかに切れの良い挙動(もっとも、これは接続されているバスの性能差に依る所も大きいだろうが)等に端的に表れており、同世代の他のチップ、例えばIntel 915に内蔵されているSATAコントローラを使用した経験から言って、CPUに対する負荷という点ではかなり有利な様に思われる。

 ちなみにこのカードは一応5Vの誤挿入防止キーに対応した切り欠きもあるので、何も考えずに通常の32bit 33MHz 5VのPCIスロットに挿しても動作するが、接続されるインターフェイスがSATAである事を考えると、最低でも64bit 66MHzのPCI、出来れば64bit 133MHzのPCI-Xスロットに挿して使うのが正解で、実際低速なスロットに挿して動かしてみると覿面に性能低下しているのが判る。

 このカードは標準状態でRAID 0/1/0+1に対応するが、RAID用ドライバでも普通にHDDを1台繋いで使う事が可能で、Silicon Image製ATA-SATA変換チップを介せば、恐らくATAPIの記録型DVDドライブの大半で問題なく利用可能である。

 あるいは、「ATAPIデバイスをSATA変換して何のメリットがあるのか?」という疑問をお持ちの方もおられるかも知れないが、実はATAインターフェイス(特にチップセット内蔵のもの)はその性質上互換性その他の事情からどうしてもCPUにかなりの負荷をかける傾向が強く、可能であれば無効にした方がシステムパフォーマンスが向上する事が多い。

 事実、筆者の場合でもマザーボード上のチップセット内蔵ATAインターフェイスに繋いでいたATAPI光学ドライブ(HL-DT-STのGMA-4020B・GSA-4082B)を、SiI3611内蔵ATA-SATA変換アダプタを介してこのカード(RAIDドライバ使用)に接続し直して内蔵ATAコントローラを無効にしてみた所、それだけで体感ではっきり判るレベルで応答性が向上しており、PCI-Xの様にデータ転送帯域幅をきちんと確保できるインフラが既に存在するのであれば、HDD・光学ドライブ共にSATA接続へ全面移行する事にはそれ相応のメリットがあると判断している。

 無論、通常のPCIでもそれなりの効果が期待出来ると思うが、S2885ANRF-Tにオンボード搭載されているSiI3114(32bit 33MHz接続)の動作を見る限りはその効果は限定的と言わざるを得ず、ここはやはりPCI-XかPCI Express等の様な高速バスと、これに対応したコントローラを用意するのが正解であると思う。

 ちなみに筆者は確認していないが、このカードを含むSiI3124搭載各カードのRAID 0/1/0+1のそれぞれのモードでの性能はかなりのものであるとの報告が複数上がっており、ここまでちゃんと動くのなら“キワモノ”ではなく通常の製品の扱いで販売しても良さそうに見えるのだが、現状ではRAID構築状態での動作信頼性その他に色々問題がある由である。

 なお、この製品、初期出荷分は512kbitのFLASHメモリがBIOS ROM用として実装されていたが、途中からは1Mbit品に変更となっており、前者の場合Silicon Imageで公開されているファームウェアをそのまま書き込めないという問題がある。

 これについては一応、筆者が試した範囲では、公開されているファームウェアをバイナリエディタで512kbit分サイズを削れば(実は512kbit以上は「00」で埋まっている。なので末尾のチェックサム整合用とおぼしき「00」以外のコードが並ぶブロックを残すようにして、その間の「00」の部分を512kbit分だけ削除してもプログラムレベルでは特に問題とならないようだ)512kbit版でも書き込み可能で正常動作することを確認しているが、この辺りは玄人志向らしいと言えばらしい話で、購入を検討される際にはこの種のリスクが伴う事をあらかじめ承知の上で臨んでいただきたい。


インデックス

一応、当ページの内容の無断転載等を禁止します