S1867DLU3AN Thunder 2500 / TYAN


CPU Type:Slot 1 (SC242) *2

Chip Set:RCC-NB6536 (North Bridge:20HE) + RCC-IB6566-P03 (South Bridge:OSB4) + RCC-NB6555 (64bit/66MHz PCI SystemI/O Bridge:CIOB20) + RCC-NB6525-P01 (SystemI/O Memory Controller:MADP) / Server Works

FSB Clock:100, 133MHz

RAM Module Type:168pin 3.3V PC/133 ECC Registered SDRAM DIMM *8

Ext.Slot:x2 AGP Pro *1, 5.0V 64bit 33MHz PCI *3, 3.3V 64bit 66MHz PCI *2, 5.0V 64bit 33MHz PCI/ISA *1

Ext.Onboard Device:SYM53C1010-33 / LSI Logic (Dual Ultra 160 SCSI) , i82559 /Intel (100base-TX LAN) , ES1373 / Creative (PCI Sound)

Power Supply Type:ATX *2

Board Form:Extended ATX

BIOS: PHOENIX BIOS for PENTIUM III


 2000年夏前にシステム組み込み限定という特殊な販売形態(TYANのページ上でも“Item not available for retail distribution. Available for OEM purchase only.”と明言されている)で登場した、TYANとしては最終世代のDual Slot 1マザーボードのUltra 160 SCSIコントローラオンボード版。

 姉妹機種としてUltra 2 Wide SCSIコントローラの53C896を搭載したS1867DLUANが存在する。

 搭載チップセットであるServer WorksのServer Set IIIシリーズはPC-9821RvII26/N20やRsII26/B40に搭載されていたRCCのChampion 1.0チップセットの後裔で、元々はChampion 3.0と呼ばれていたものがRCC→Server Worksへの社名変更(注1)に合わせて改名されたものである。

 これは基本的には新社名の示す通りサーバー用途での使用にフォーカスしたアーキテクチャのチップセットで、Intelのチップセットで言えば82450GXや82450NXに相当し、内部的にプライマリPCIバスを複数備えMADP(Memory Addressing Data Pass)と呼ばれるメモリアクセス性能の改善のためにn-wayインターリーブアクセスを可能とする拡張コントローラのサポートや、最大16GBのメモリ実装に対応する、等といった特徴を備えている。

 それ故、そのServer Set IIIでも上位のServer Set III HEを搭載するこのマザーボードも御覧の通りの重装備ぶりで一見非常に魅力的なのだが、サーバ用がルーツで通常使用にはあちこちに難があり、基本的には一般販売が実施されなかった。

 実を言えば、このThunder 2500は元来INTERGRAPHのZX10と呼ばれるワークステーションへのOEM供給用として同社との共同開発で誕生した製品(注2)であり、本当ならば一般市場で日の目を見よう筈の無い製品であった。だが、当時Dual CPUマザーボード用チップセットの大本命と見なされていたIntel 820/840が発売延期やトラブル多発で自滅したことから、制限付きとは言いながらも止む無く一般市場に投入されたものであった。

 この時期、Intelは長く続いた82440BX/GXの後継機種開発を巡って迷走を続けており、Intel 820のRIMMソケット3本動作時の問題発覚に伴う発売延期、同じく820でのSDRAMサポート(MTH)での高負荷運転時のトラブル発生とリコール、Intel 840のSDRAMサポート(MRH-S)でのメモリの相性問題や高負荷運転時のトラブル発生とリコール、といった具合にメモリ周りに集中的にトラブルが発生した(注3)。そのため、TYANに限らず各社とも440BX/GX以後のDual CPU対応マザーボードの新製品開発で大混乱に陥っていた。

 この問題を解決すべくTYANが選択したのが、ローエンドへのVIA Apollo Pro 133Aの、そしてハイエンドへのServer Set IIIシリーズの採用であった。前者はTYANが最初にこのチップセットを搭載したDual Slot1マザーボード(後のS1834D Tiger 133)の試作機を発表した際にチップセット開発元であるVIA側を驚愕させ、以後RIO WORKSをはじめとする各社がApollo Pro系のチップセットを搭載したDual CPUマザーボードを発売する様になるきっかけを作った曰く付きの選択であったし、後者もこのThunder 2500の発表によってこれまで常に裏方に回ってきたServer Worksを表舞台に引きずり出すという歴史的役割(注4)を果たし、更にはSuper Microをはじめとする同業他社も一斉に追従する一因となった。つまり、この時期のTYANの対応は(恐らくどの会社も同じ方法を検討していたにせよ)以後のDual CPU搭載マザーボード市場の方向性を占う上で重要な意味を持ち合わせていたのである。


 さて、歴史的背景はこの位にしておいてこのボードそのものの話に戻るが、これはTYANの製品の流れとしてはThunder 100→Thunderbolt→Thunder 2000(注5)となるべきであったのが、840やRIMMの問題で→Thunder 2400(注6)に振り替えられたものの、結局これもラムバス→SDRAMバスプロトコル変換用リピータハブであるMRH-Sのメモリ相性問題があまりに大きかったために出荷本数を絞らざるを得なかった同製品の代役として、条件付きで一般市場向けとして出荷されている。

 もっとも、例えその場しのぎの代役であったとしても、右上隅を切り欠いた独特の基板デザイン、綺麗なアートワーク、2つ並列接続で搭載されたATX電源コネクタ、i82559 100Base TX LANコントローラやES1373サウンドコントローラのオンボード搭載など、この時期のThunder系の特徴は全て備えており、その上で840チップセット搭載のThunder 2400でさえ2本しか持っていなかった64bit PCIスロットを6本(注7)搭載し、メモリもPC/133 DIMMソケット8本で最大8GBまでサポート(!)とあまりに魅力的かつマニアのあこがれをかき立てる(笑)仕様であったから、誰もこれがThunder 2400の代役とは考えず、型番からむしろその上位版であると見なしていた。

 だが、その魅力的な仕様に惹かれて大枚叩いてこれをシステム組み込み状態で購入した人々は、メモリが高価なECC Registered PC/133 SDRAM DIMM専用、それもインターリーブアクセスのために同容量のものを2本単位で実装せねばならない・FSB 133MHz版のPentium IIIでなければ2本の64bit 66MHz PCIバススロットは33MHzでしか動作しない・オンボードのSCSIが64bit 33MHz接続でしか動作せず、Ultra 160 SCSIが2chともフルに性能を発揮する事は理論上出来ない・GeForce系&RADEON系不可など極端に相性の厳しいAGPスロット・Windows 2000でオンボードUSBが使えない・ACPI非対応でシャットダウンに難がある、等といった具合に製品として考えるとあまりに厳し過ぎる“仕様”の数々に直面させられて絶句した由である。そのため、本当にこれの持つ機能を必要とした人以外は同じServer Set III系のAGPスロット搭載マザーボードでもより現実的な設計に改善された後発のThunder HE-slやSUPER 370DE6あるいはSUPER P3TDE6等に乗り換えてしまった、という話が伝わっている。

 一言で言えばこれはAT互換機用マザーボードの中でも5本の指に数えられるべき難物で、筆者はこれを2003年9月2日に行きつけの日本橋の某中古店のジャンクコーナーで発見し買ったが、この際店員氏に何故これがジャンク扱いなのか尋ねたところ、「RegisteredのDIMMを挿して動作確認しようとしたがピーピーエラー音が鳴って起動しなかったためにジャンク扱いとした」、との由で、どうやらこれは専門の筈の中古店にとっても相当な難物であった様だ。

 ちなみにこの時購入した分は結局死亡判定(涙)だったのだが、2004年11月19日に本家Intergraph ZX10を入手してリベンジを果たした。

 余談だが、この死亡判定だった板からケミコンを外して流用しようとした際に、ZAとZL(CPU周り)、それにMH5(PCIスロット周辺)とルビコン(日本の一流メーカー)製電解キャパシタ(ケミコン)が重要な部分に集中搭載されていることが判明した。

 ロープロファイルが売りのMH5はともかく、ZAは「超低インピーダンス品」、ZLは「高リプル低インピーダンス品」とカタログでその高性能を謳う高級品で、要するにその破格の価格に見合うだけの部品が吟味されていた訳である。

 前述の通りこの製品用としてTYANが提供しているBIOSではUSB使用不能・ACPI非対応となっているのだが、実はSilicon Graphics(注8)が提供しているZX10用最新版BIOS(Ver.01.00.08.01)ではこれらは双方共に有効となっており、またGeForce2 GTSでも起動できたので、明らかにTYAN版よりも進化していることになる。

 只、困ったことにはいわゆるスロケット併用でのSocket370版Pentium IIIの搭載は想定していないらしく、もしかしたら筆者の使用したCPUのステッピングの問題の可能性も否定出来ないが、この種の構成では起動時にマイクロコードのアップデートが出来ないとエラー表示され、例えFSB133MHz版のCPUであってもFSB100MHzで起動してしまうという問題を抱えている。

 無論、Slot1の板なのだからSlot1のCPUを挿すのが筋というものだが、1.0BGHzのSlot1版Pentium IIIの入手が極端に困難なことを考えるとSocket 370のCPUを排除しないで欲しかった気はする。

 なお、これはInterleave動作だけあって動作が軽く、メモリとCPUの入手性には難があるが、64bit PCIスロットが無闇に付いている上にISAスロットまであるという、他には殆ど例のない構成(注9)ということもあり、実用上は利用価値が高い製品であると言えるだろう。

 但し、BIOSはSGIの最新版が事実上必須で、しかもFSB100MHz版のPentium IIIでなければならない(FSB133MHz版の場合、Intergraph→SGI版BIOSの下ではDIMMソケット1組2本に専用のターミネータDIMMと呼ばれるダミーのDIMMを挿さねばならない)のであるが・・・。


 (注1):更に後にBroadcomに買収されたが、Server Worksの名はブランド名として存続している。

 (注2):実際、問題のAGPもWild Cat系の様なOpen GL対応ハイエンドグラフィックカードでは問題なく動作する事がメーカー側からアナウンスされており、やはりこれはそういった用途限定の製品なのであろう。

 (注3):要するに、Intelが当初思っていた以上にDRDRAMへの移行には多大な困難が付きまとったという事である。

 (注4):それまでメーカー公式サイトすら無かったServer Worksは、これ以後自社サイトを用意するようになった。

 (注5):Intel 840 + RIMMという構成のSlot1 Dualマザーボード。予告されたが未出荷に終わった。ただしこれはその後、Thunder i840としてDual Socket370構成に仕様を改めた上で復活を遂げることとなった。

 (注6):Intel 840 + MRH + SDRAMというSUPER PIIIDMEと同様の構成の製品で、こちらは一応出荷された。

 (注7):その内2本は3.3V PCI専用でしかもCPUのFSBが133MHzの時のみは66MHzで動作し、また別の1本は何とISAとの排他仕様となっている。

 (注8):Intergraphは後年、Zx10の部門を同社に売却した。

 (注9):筆者の知る限りでは、DECのAlphaマシンの一部とMicronの怪作、MTSAM64GZ Grizzly位しか思い当たらない。


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