NetRAID (D4943A) / HEWLETT PACKARD
インターフェイス:Ultra Wide SCSI (68pin SE 40MB/s) * 3 Channel
転送モード:Bus Master
Bus:PCI Bus Rev.2.0 (32bit 33MHz 5V)
SCSIコントローラ:53c770 / SYMBIOS LOGIC * 3
対応機種:PC/AT互換機
動作確認マシン/マザーボード:PC-9821Xv13/W16,S2460 Tiger MP,FW-6400GXR/150/WS
HEWLETT PACKARDのPENTIUM PRO搭載サーバマシンであるNetServer LH Proに搭載して販売されていた、フルサイズのPCI RAIDカード(メイン基板のHPでの型番はD4943-60002)。
これはAMI BIOSで知られるAmerican Megatrend Inc.製MegaRAID Enterprise 1200(Series 428)のOEM供給品で、ROMに書き込まれているファームウェアが異なる他、ミッションクリティカルな用途に使用される可能性のあるサーバマシンに搭載するという事で薄型大容量Ni-MHバッテリーモジュール(D4943-60003。AMIの型番はSeries 439。基板がEnterprise 1200にそのまま装着するには大き過ぎて干渉する事とその型番から考えるに、本来はEnterprise 1300(Series 434)か1400(Series 438)用と思われる。フル充電状態で標準搭載の4MB SIMMについて60時間のデータ保全を保証する)が当初より標準搭載されていて、前述のバッテリモジュールと干渉する為に内蔵50ピンSCSIコネクタ3基が省略されているという違いがある。
但し、ファームウェアは違うが機能的には完全コンパチで、RAID 0/1/3/5/10/30/50(10/30/50はAMI独自の定義で、1/3/5を2組並列でストライピングする)をサポートする。
搭載CPUはメモリコントローラやDMACを内蔵するCPGAパッケージのIntel 960CA 33MHzで、この種のカードとしては珍しくソケットに挿して実装されているのが目を引く。
メモリは70ns以上の速度のパリティ付きFast Page Mode DRAM(EDO DRAMは不可)搭載SIMMが2本搭載可能となっていて、標準状態では4MBのSIMM(D4943-68002)が1枚実装されているが、その増設・交換パターンは4・4+4=8・16・16+16=32・64・64+64=128の6種類に限られ、それ以外の容量のSIMMを、つまり8/32/128MBのSIMMを搭載した場合はそれぞれ4/16/64MBしか認識されず、更に2種の異なった容量のSIMMを混載した場合には少ない方の容量のSIMM2本として認識されてしまう(例えば4+128の場合だと4+4=8MBになってしまう)、という制限が存在する。
これは、パリティ付きの場合1/4/16MBitのDRAMチップ*36という構成のみをサポートし、しかも異種容量のチップを混載した場合、各チップの容量が最小容量チップと同等に揃えられてしまう(それ以上は無視する)、というIntel960CAのメモリインターフェイスの仕様による制限であるらしく、同シリーズのCPUを搭載するRAIDカード全般に共通する欠点となってしまっている様だ。
また、PCIバスブリッジ&パリティジェネレータ(XORエンジンとも呼ばれる。その名の通り各ディスクに書き込むデータブロックを排他的論理和(=XOR)演算し、その結果(=パリティ)をリカバリ用ブロックに書き込むのに利用される。RAID 3/5では必須の機能) としてはAMI自社開発のコントローラチップが搭載されており、この時期のPCIバスブリッジとしてはかなり高速な転送性能を実現している。
但し、筆者のチェックした範囲ではどうも31MB/s〜32MB/sあたりに転送性能のボトルネックがある様で、キャッシュ容量やアクセスするファイルサイズに関わりなく、これ以上の転送性能を得る事は(例えRAID 0でも)出来なかった。
あるいはPCIバスの占有の問題やチップセット/ドライバの組み合わせによるものかも知れないので確言は避けるが、少なくとも32bit 33MHz PCIバスのピーク性能にはほど遠い値しか得られなかったのは事実である。
これは今となっては大したスペックではないが、このカードが発売された当時のHDD性能を考えると、例えSCSI 1chにつきHDD 1台を割り当てた構成(つまりHDD 3台)によるRAID 0でも恐らくピーク性能を出すのは困難だった(HDDの単体でのピーク転送性能が20MB/sを超えたのは確か98年以降の話なので、96年〜97年頃なら例え3Ch同時アクセスでもボトルネックが問題視される程の性能は得られなかった)筈なので、これはこれで釣り合いが取れていた訳である。
このバスブリッジによるカード上のセカンダリPCIバスに接続されるSCSIコントローラはSymbios Logicの53c770で、これは1chのUltra Wide SCSIコントローラとしては初期の製品であり、後継の53c875以降と比べると機能的に劣る部分がある(事実、RAID 0を1台のディスクで構成してベンチマークテストを実施してみると、ディスクキャッシュ容量で圧倒的に有利な筈なのに、直系の子孫である53c1010-33にドライブをUW接続で直接つないだ場合に比べて性能が明らかに劣る事が確認できる。但し、これはRAIDコントローラの処理上のオーバーヘッドも考えられる)が、SCSIチャネルを複数持ち、複数のドライブに分散並列アクセス出来る事にこそ意味があるこの種のRAIDカードでは、これはさほど大きな弱点とは言えまい。
何にせよ、非常に重装備且つ複雑な構成のカードであって、この時期のハードウェアRAIDカードの一つの典型と言えよう。
ちなみにOS側のサポートは、Windows NT、Netware、それに商用UNIX互換OSがメインだが、NetRAIDとしてはWindows 2000Serverまでが公式にフォローされており、それ以外にMegaRAID Enterprise 1200のドライバ・ユーティリティも全て使える様なので、Windows 9x以外の大概のOS(但し例によってそもそもSCSIデバイスをサポートしないTRON系や、どう考えてもノリが違うBe OSは不可)で利用可能という事になる。
なお、これは完全に余談であるが、このカードのBIOSをジャンパでDisableにしてPC-9821Xv13/W16に挿し、Windows 2000環境で最低限のチェックしたところ、一応まともに動作している様である。
何しろ充分な数のHDDが用意出来ない状況でのチェックなのでこれ以上は調べられなかったのだが、BIOSを殺せるこのシリーズのカードを用いればPC-98でのハードウェアRAID環境構築の可能性がある事は申し上げておく。
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