CHANPON3-PCI / 玄人志向


インターフェイス:Ultra 2 Wide SCSI (68pin LVD 80MB/s)/ Ultra SCSI (50pin SE 20MB/s) + USB 2.0

転送モード:Bus Master

Bus:PCI Rev.2.1 (32bit 33MHz 5V)

SCSIコントローラ:INIC-1060P / Initio + SYM53C141 / LSI Logic

PCI to PCI バスブリッジ:21152 / Intel

USB 2.0コントローラ:μPD720100AGM / NEC

サウンドコントローラ:CMI8738/PCI-6ch-MX / C-Media

対応機種:PC/AT互換機・PC-9821シリーズ(DOS ASPI非対応)

動作確認マシン/マザーボード:PC-9821Xv13/W16PC-9821RvII26/N20PC-9821Ra300/M40S2466N-4M


 Ultra 2 Wide SCSIコントローラとSE/LVD SCSIバスブリッジ、USB 2.0コントローラ、それにサウンドコントローラを搭載するいわゆるコンボカード。

 これは「一見ありそうでなかった」タイプの複合カードで、特にPCIスロット本数が少なく拡張性に乏しい、けれども搭載チップセット(時期的にはIntel 430HX/TX・440FXあたりが該当する)のお陰でPCIバスの性能はそれ相応に得られる機種の多い、1996〜1997年前後の大手メーカー製PCIバス搭載マシンのパワーアップを主目的に設計された製品である。

 これは建前としてはPC/AT互換機用なのだが、“有志”が作成したというBIOS(2005年2月末で惜しくも閉店したOvertop IIのサイトにて公開されていた)をフラッシュROMに書き込む事でPCIバス搭載のPC-9821各機種(但し、チップセットとしてVLSIのSuperCore591/594を搭載する機種の場合、PCIバスのダンピング抵抗の関係で正常動作しない事が多く、PC-9821Xv13/R16等の型番に/Rサフィックスの付いた後期生産グループ以外の機種では改造しないとまず正常動作しない由である)で利用可能となり、ValueStar系をはじめとして自由に出来るPCIスロット本数の制限の厳しいマシンの多い98では正に救世主同然のカード(その為、筆者はこれを3枚買った)である。

 そもそも玄人志向の創設が、初代CHANPON(Ultra SCSI・100Base TX LAN・USB1.1の複合カード)と密接に関わっていた事もあって、同社はある意味隙間商品とも解されるこの種の複合カードの開発・販売に熱心であるが、中でもPCIバススロット搭載PC-9821ユーザーの切望して止まなかった高速SCSIインターフェイスとUSB 2.0インターフェイスを統合した本製品は、初代・CHANPON2(USB2.0・UltraATA/100・IEEE1394複合カード)に続く同社のオリジナル製品のフラグシップ的存在と位置付けられていた様で、同社サイト上で開発途中の基板写真が公開されるなど、通常の製品とは異なった扱いがなされていた。

 性能的には、32bit 33MHz PCI to 32bit 33MHz PCIバスブリッジチップであるIntel 21152(旧DECの半導体部門がその最末期に開発したチップで、前作21050の改良版に当たる。性能的にはPCI Rev2.1準拠への移行に伴い3.3/5V両対応化やブリッジ転送性能の向上などを実現しており、32bit 33MHz to 32bit 33MHzという条件では安定性・速度共に今なお最良のブリッジチップの1つであるが、かなり高価である)を介している為、ブリッジ無しでマシン側のプライマリPCIバスに同じINIC-1060P SCSIコントローラが直結されるIOI-A100U2Wと比較するとどうしてもUltra 2 Wide SCSIの実効速度が低下する傾向があるが、それでもUltra Wide SCSI対応インターフェイスカードであるAHA-2940UW等と比べると充分高速で、SE/LVD SCSIバスブリッジたるSYM53C141が搭載されているお陰でIOI-A100U2Wで問題となったSE/LVD対応SCSI機器の混在によるUltra 2 Wide SCSI接続機器の性能低下が発生しない事も含めて、このカードのSCSI部分の実用性は非常に高い。

 このカードで惜しいのは基板実装の制約上からSE側がUltra SCSIまでの対応となり、Ultra Wide SCSIの機器が使えない(68ピン→50ピン変換アダプタ経由でUltra SCSI接続するか、さもなくばLVD側の68ピンコネクタ経由でUltra Wide SCSI接続すれば利用可能だが、前者の場合はUltra Wide SCSI機器の性能が発揮できず、後者であれば混在時にUltra 2 Wide SCSI対応機器の性能が発揮できなくなる)事で、内部50ピンのコネクタの替わりに68ピンのコネクタを実装する事は出来なかったものかと今でも思う。

 余談だがこのカードで50ピンSCSIコネクタにSCSI対応のCD/DVD-ROMドライブを接続して使用する場合、MS-DOS上ではASPIドライバが提供されていない為に通常の製品では事実上お手上げなのだが、Plextor(CD-R/RWドライブを含む)とPioneer(DVD-303S位まで対応)のSCSI CD/DVD-ROMドライブについては両社が提供するDOS用デバイスドライバがASPIではなくPC-9801-55互換BIOSに依存する仕様となっている関係でDOS上で問題なく利用可能となっており、PC-9821シリーズにこのカードを挿してDOSでCD/DVD-ROMを利用される場合には、この2社の対応製品を用意される事を強く推奨しておこう。

 なお、INIC-1060P搭載SCSIカード全般について言える事だが、このチップのWindows 2000用ドライバは、2002/07/25のタイムスタンプのService Pack 3対応版以前の各バージョンのものについてはService Pack 3を適用したWindows 2000環境で動作速度が異様に低下するという問題が発生する事が知られており、当該環境でお使いの方には特にこの点についてご注意願いたい。

 次に、このカードの1つのセールスポイントであるUSB 2.0インターフェイス機能についてであるが、これは開発当時非常に高価だったNECのチップを搭載した(開発当時、USB2.0対応コントローラには選択肢が事実上存在していなかった)為にカード全体のコストを大幅に引き上げてしまったという曰く付きの代物である(しかも現在の基準で言えばかなり遅い)。

 このインターフェイスはUSB 1.1準拠のコントローラとUSB 2.0準拠のコントローラを共にチップに内蔵する事で、USB 2.0非対応だがUSB 1.1には対応するOSでもUSB 1.1だけは使える様にする機能を持っている為、Windows 98でもUSB1.1としてならば利用可能となっているが、その真価を発揮させるにはやはりWindows XPやWindows 2000(標準では対応していないが、AT互換機ならばServicePack4適用で、98でも保証はないがWindows UpdateカタログでMicrosoft製ドライバ(製造元がMicrosoft(ここが重要。チップ製造元のNECではない)の「NEC usb software update released on June 01 2001. - (投稿した日付: November 04, 2003)」)等でドライバを入手可能で、一応動作している)で利用するのが正解であろう。

 つまり、PC-9821でその性能を発揮させるにはWindows 2000を使用する他無いという事なのだが、実はここに一つ落とし穴があって、現在筆者が使用中のPC-9821RvII26/N20では割り込みモードを拡張に設定してマルチプロセッサ対応HAL(シングル・デュアルの双方共)で動作させると何故か肝心のUSB 2.0機能だけ正常に動作しない、という問題が発生している。

 これは割り込みモードを互換モードに設定してPC-9821用HALを用いると正常に動作している事からも明らかな通り、RvII(及び同様に拡張モード動作時のRv20や、そもそも拡張モードでしか動かないRs20・RsII26)本体のBIOS/ITF-ROMが備えるAPICモード時のリソース管理機能に不具合がある為で、このモードの下でMS-DOS等の割り込み制御を乱暴に扱うOSやソフトを動作させるとかなりの確率でトラブルが発生する事を併せて考えると、RvII等に搭載されているAPIC対応BIOSにはやや難があると言わざるを得ない。

 なお、この問題の回避については、現在ではまりも氏が作成されたCHACHA(検証が不十分との理由で現時点では使用期間制限が設けられている)のお陰で可能となっている。

 この辺はユーザーやハードメーカー側には如何ともし難い問題であるのだが、ともあれこの種の新しい規格に準拠するハードウェアには、その新しさ故に問題が発生する可能性がありうる事は覚悟しておく必要がある。

 また、筆者の環境ではこのカードのSCSIバスにPIONEERのDVDー303S(CD-ROM 32x・DVD-ROM 6x RPC-1)を繋いでWindows 2000 ProfessionalでWin DVD 3.0(Canopus扱い。現時点で提供されている最新パッチ適用済み)を用いてDVDソフトを観ようとするとリージョンコードが不一致である旨表示が出て再生されないというトラブルも発生しており、この問題は同条件下でRvII26標準搭載のUltra SCSIコントローラ(AIC-7860 / Adaptec)に接続した場合には発生しない事を考慮に入れると、このカードはドライバやBIOSを含め、SCSI回りの細部に少々問題がある様だ。

 最後に、このカードには上記2つのバス帯域を大量に消費するインターフェイスの他に、6chサウンド機能が搭載されている。

 これは最近の台湾メーカー製PC/AT互換機用マザーボードでお馴染みのCMI8738に依るもので、正直他のチップとの釣り合いという意味ではバランスの悪い選択なのだが、これは玄人志向が当製品開発中に開設していた掲示板での質疑応答によれば当初YMF-754の採用を検討していたものの、同チップの入手が困難(YAMAHAは既にYMF-7x4系サウンドチップの開発や生産を中止している)であった為に次善の案として止む無くCMI8738の採用となった由であった。

 このチップでもCバス上のWSS PCM音源を使うよりは遙かにマシ(機能的にもCPU負荷の面でもISA/Cバスデバイスは問題が多い。但し、CMI8738のリファレンスドライバはCPU負荷が結構高い)であって、その選択は止むを得ないものと思うが、機能的により望ましいYMF-754の搭載が叶わなかったのはいかにも残念な事ではある。

 もっとも、このサウンド機能はカード基板上の片隅に、まるでおまけなのだと言わんばかりに慎ましく実装されていて背面ブラケットにはコネクタを持たない(専用ブラケット経由でSPDIFとアナログの入出力を実現する)ので、ジャンパで機能を殺して専用ブラケットを取り付けるべき空きのPCIスロット(当製品にはCバスの空きスロットにISA/PCIバススロット用ブラケットを取り付け可能とする為の変換金具が付属しており、通常はこれを用いてCバスの空きスロットにブラケットを取り付ける事になるものと思うが、PC-9821RvII26とRsII26の2機種についてはケーブル長がぎりぎりなので、Cバススロットにブラケットを取り付けるのはかなり面倒である)にYMF-754搭載サウンドカードでも挿して使えばそれはそれで済む問題ではあるのだが、PCIスロットの絶対数が少ない他の機種での対応を考えると少々残念である。

 この点については前述の開発掲示板でかなり議論されていた様だが、コストやドライバの対応等の問題も関わってくるのでなかなか難しい様だ。

 この複合カードはPCIバススロット搭載のPC-9821シリーズをWindows 2000で快適に利用するにあたって事実上必須の1枚(但しSuperCore594 “Wildcat”等のVLSI製チップセット搭載98ではPCIバスの電気的な問題であまりお勧め出来ない)なのだが、残念ながら2003年秋までには生産が完了してしまっている。

 このカードを必要とされる方は中古なり、ネットオークションなりで探索されたい。


 なお、これはイレギュラーな使い方なのだが、かつてIOI-TechnologyがIOI-A100U2W用として提供していた9821/AT両用BIOS(Ver.1.03D)をこのカードのFlash ROMに書き込むと、このカードのAT/98両対応化が一応可能である(しかも98の方のBIOS設定もBIOS内蔵ユーティリティで実行可能である)事は確認している。

 これは著作権上まずい使い方であるし、そもそもIOI-A100U2W用両用BIOS自体が入手困難(というかIOI-A100U2Wを実際に9821に挿すべく買った人間でもない限り持っていないだろう)なので、とてもお勧め出来ない話なのだが、あくまで一つの実験記録としてここに記しておく。


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