X1-CAI
(X1シリーズ用クラスルームCAI)

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 いつものようにヤフオクを巡回していたら、X1用という何やら見慣れぬボードが…。これはやはり詳しく調べねばならないってわけで、がんばって入手に成功しました。

 どうもシャープ製ではあるようですが明らかにX1用の拡張ボード、ただCZ型番など刻印されてませんし、いったいどんな素性なのだか…。



 ROMは27256、二つありますので計64KBですね。ラベルに「X1-CAI-EXECUTOR」とあるのがボードの機能を物語っているのでしょうか?

 それと、シャープはシャープでもシャープエンジニアリングの刻印があります。なるほど、ある意味純正であり、またある意味では一種のサードパーティ製品とも言えそうです。



 こちらはRAM側。M5M4256Pというメモリが16個あります。M5M4256Pは256K×1bitなので、計512KBあるということになりますね。EMMにしては容量が大きい? それともバンクメモリ?

 いやまぁ、なんということはないROM/RAMボードですね。カードエッジの信号を見てみれば、アドレスが12本しか使われていないことを考えてもバンクメモリってわけはありませんか。

 …と思ってたら、Oh!MZ誌1986年1月号に紹介記事がありました。見たはずなんですが、すっかり忘れておりました…。

 テレシステムズ製だったんですね。シャープエンジニアリングの文字をシールで隠してありますね。

 せっかく入手したのですから、えいやっと回路図を起こしてみました。

ふむ、どうやらRAMはEMM、ROMはROMディスクのようで…。








 ならばと第0レコードを見てみると…おぉ、予想通りブートレコードがありますよ。やはり自動起動するROMディスクなんですね。





 これはディレクトリエントリでしょうか…EXE.COMてのが本体で、OVLという拡張子のファイルはオーバレイ(本体から随時? ロードされる)なんでしょうかね…。

 1ファイル16バイトのエントリですし、ファイル名本体が7文字とか、これはオリジナルで設計されたファイルシステムなんでしょうね。すると各ファイルを取り出すのはちとホネか…。






 さらに先を見てみると、コピーライトメッセージが…! ボードと同じくシャープエンジニアリングと、さらには筑波大学の名前がありますね。

 筑波大学? CAI? いったいこれは何なのか…?

 Oh!MZのRM-X1E紹介記事では、EMMとして使うと余ってしまう192KB分の存在が不可解だったようなのですけど、本来の目的がBASIC用じゃないとか知らないとそう思いますよね…。

 てなわけでX1とCAIを手がかりにググってみると、竹園東小学校で導入されたCAIにX1turboが使われている風景の写真があるサイトに行き当たりました。さらには、こちらのページにも保存されているX1turboの写真がありますね。そしていろいろ調べていくうちに、筑波大学とX1とCAIの関係がだんだんとわかってきました。

 どうやら、今回入手したボードはこの竹園東小学校で保存されているX1turboの拡張I/Oスロットにも装着されているらしい、CAIのために開発されたボードのようです。個人的にはCAIなんてすっかり下火になっているものと思い込んでいました。でも実は、下火どころか今でもその流れを汲む教育が続いているらしいこともわかってきました。

 そこで過去に出版された書籍なども入手して、X1とCAIの関係についてまとめてみました。


X1とCAI

CAIとは

 Computer Assited Instruction、またはComputer Aided Instruction…教育現場にコンピュータを導入し、教育のもろもろを変革しようとする運動、またはその装置…とでも言えばいいでしょうか。Wikipediaでも多少その歴史について知ることができますが、特にパソコンの黎明期には「さまざまな問題にぶち当たっている学校教育の救世主になるのでは?」とかなり期待されて、いろいろな研究機関や教育に携わっている先生達が挑戦していたように記憶しています。

 いや、別に教師でなくても、BASICの解説本なんかではプログラミングのサンプルとしてだったり、あるいはその読者の発想から、「パソコンが勉強の道具に使えるんじゃないの?」て思うわけですよ。乱数を発生する関数を使えば、単語帳をランダムにめくったり、計算式のそれぞれの項を自動発生させて問題を作れば、プログラムを走らせるたびに真新しい問題集が目の前に現れるのです。合ってるかどうかはパソコンが判定してくれます。そうすれば、単語を覚えているのか単語の出現順を覚えているのかわからないなんてことはなくなるわけです。

 …でもまぁ、少し考えればわかることですが、自動生成された問題集なんてあっという間に飽きるんですよね…。ひたすら問題を解くってのは、ドリル以上に苦行でしかないでしょう。勉強にパソコンを持ち込むのは、それはなんと言っても自分自身が変化した環境に目新しさを感じてやる気を出させるためであって、なぜそんなことを考えるのかと言えばそれは勉強がつまらないからですよ…。そもそもそういう苦行に耐えられるのなら、変な工夫をしなくても勉強を続けられるはずですよね。
 そういうこともあってか、やはりインセンティブ…正解したら褒める、間違ったら励ますというようなことはあってほしいと思うわけです。とはいえそれだって「スゴイネ!!」「ザンネン...」とか単純な台詞ではやっぱり飽きるわけで。

 もっとアニメーションとか使って楽しくできないか?…と工夫して、多数のパッケージソフトを取り揃えるに至ったストラットフォードC.C.C.という会社がありまして…。

 かなり長い間こんな広告をパソコン雑誌に出し続けていたので、当時のホビイストならご記憶の方も多いのではないかと思います。多数の教科を網羅して、さらには理科の実験を疑似体験するようなソフトが予告されていたりなど野心に溢れているのは伝わってくるのですが…「正解にはバンザイを三唱」とか「3回間違えるとロケットが衝突」とか、本当にそれだけだったら5分で飽きそうな気が…。

 ストラットフォードC.C.C.の名誉のために付け加えると、創業者の方は劇団四季の劇団員の傍ら学習塾を経営していたところから教育についての関心がそもそも高く、家庭教師派遣会社を設立(上記広告の「家庭教師センター学習館」)し、そして家庭教育ソフトという方向に進出したようです。その真剣さは「CAI教材開発及び流通システムの構築と評価に関する研究 : 産・官・学共同研究の成果と課題」という論文に関係者が名を連ねるほどで、教育用ソフトの可能性をとても信じていたのだろうと伺えます。

 「家庭教師のコンピュータ化」ということでは湯浅教育システム「ヤルキー」も良い動画があるので紹介しておきましょう。エミュレータ制作で有名な武田氏による2016年エイプリルフールネタ(でもちゃんと動く)です。

 定期的にカセットテープ付き教材が送られてきて、動画のように音声と画面の指示に従いながら学習を進めていくわけです。他にもファミコンを使用したものなど、様々な工夫を凝らした学習教材が製品化されていたようです。

 「家庭教師のコンピュータ化」は、CAIというよりはむしろ「適した人材を揃えられなくてもコンピュータを使えば教育の質は一定以上に均質化可能である」という狙いがあったのではないかと思います。家庭教師による子供への性的いたずらの心配もあるでしょう。学習塾など以前から教育のノウハウを持つ企業がたくさん参入してきたこともありましたかね。

 ですが、Wikipediaにあるようにその内容が見直され、いつの間にかCAIという言葉もあまり聞かなくなったような気がします。かつてのLL教室のように、教材・機材の維持ができず廃れていった歴史をCAIも辿ったのでしょうか?

 今回、ボードの入手を機に(またこのボードを足がかりに)CAIについて調べてみると、いろいろと面白いことがわかりました。そして、CAIは死んだりしていませんでした。ここから、CAIとX1にまつわる話を中心に、ちょっとその内容をご紹介してみようと思います。


筑波大学のCAI研究

 コンピュータそのものに可能性を見いだしたり、海外の教育事情を聞いたりして、1970年代後半には日本でも同時多発的にあちこちにCAIを研究する機関や先生達が現れました。そういうこともありますので「我こそが日本のCAIの第一人者だ」と自称・他称される方が少なからずいそうな気がするのですが、お話の都合もありますのでここでは筑波大学の中山和彦教授と東原義訓助手(肩書きはいずれも当時)をご紹介いたします。この方々もまた、当時から「CAI研究の第一人者」として有名だったようです(ようです、ってのはつまり自分が当時知らなかったという話なんですが)。

 中山教授はパソコンサンデーのCAI特集でも出演されていますね。

 中山教授が目指したのは、「一斉授業の中で個別学習を可能にする」CAIシステムでした。明治日本が農業社会から工業社会に変化するのに対応して、均質化された、一通り最低限の知識を備えるための授業を行っていたのを、21世紀を見据えて(1970〜80年代の話ですので)情報化社会への変化に対応して自分なりの個性を持ち創造性のある人間になるための授業にしなければならない、ということが叫ばれたわけです。考える力を養うために、それぞれの学ぶ力に合わせた個別学習が必要になると考えられたのですね。

 個別学習というなら、マンツーマンが最も理想的だと思う所ですが…そうとは限らない、と中山教授は言います。いくら先生が生徒と対等に話しディスカッションを通して正解に導く姿勢を取ったとしても、生徒からすれば先生の方が絶対的に知識量も豊富ですし正解を知ってるはずなので、先生に従えば良いと考えてしまうのだそうです。それでは一斉授業と何も変わりません。

 もう少し多く、10〜15人の少人数クラスだとどうでしょうか。過疎がゆえにそういう状態になっている学校では、低学年でできてしまうという順列…よくできる/そこそこできる/あまりできないというカーストみたいなのが定着してしまい、良くできる子が答えたらだいたい正解なので「それでいいじゃないか」とばかりに他の子が積極的に答えなくなったりすることがあるのだそうです。先生は他の子も指名して考えさせようと工夫するのですが、最後にはその良くできる子が答えて終わる形になり、なかなか苦労しているという話でした。生徒の数が十分に多ければクラス替えでシャッフルされることである程度解消されたりすることもあるらしいのですが、過疎地では入学したそのままの構成で卒業するので、できない子はできないと思い込み成功体験によって改善する機会が少ないそうなのです。

 そして少人数クラスでもマンツーマンでも、多様な意見に触れる機会が少ないという問題があります。例え一つの正解にしかならない問題だとしても、どう考えたか・どう工夫したかの意見を戦わせ、その中から正解に至る道を見いだすということが「自分で考え行動できる」人間を育てることにつながるのだ…というわけです。ならば、一斉授業を行いながら、個別学習にて理解の遅い子にはアシストし、理解の早い子にはさらに難しいことに挑戦させるということをしつつ、生徒同士でガヤガヤ意見を交わして学習するのが良いだろう…というわけですね。

 そういう用途に合うCAIシステムを構築するため、中山教授のグループは次のようなアイテムを開発しました。

 市販の教育ソフトの多くは、パソコン用ということもありますので、BASIC言語で記述されていました。また学校の現場でCAIを試みようとする先生も、BASICで教材プログラムを作っていました。パソコンをCAIに使おうというのですから自然な話なのですが…やはり無理があるのですね。
 パソコンの黎明期は「パソコンを使う」=「BASICでプログラムを作る」だったのですが、誰もがBASICをマスターできるわけではないということが、既に当時わかっていました。学校の現場で熱心な先生がいるというのはたまたまBASICでプログラムの組める先生がいたということでしかなく、そういう人(=当時、パソコンに詳しかった人)がいない学校ではCAIを導入する機運すら生まれないんです。
 学習をシナリオに沿って進めていくソフトのことを「コースウェア」といいますが、しっかりとした内容のコースウェアを作るためには一介の教師が一人でコツコツ作っていたのではとても間に合わないほど、奥深かったりします。長野市立清野小学校に在籍した中嶋覚先生の述懐でも、BASICで組んだCAIを東原助手が「これは古い」と指摘するくだりが出てきます。実はCAI研究では、既に当時からコースウェアの作成にBASICなどのプログラミング言語を使わず「オーサリングシステム」を使用するのが当たり前とされていました。
 CDやDVDの書き込みソフトのことを以前「オーサリングツール」と呼んでいたことがありました。これは写真や動画のデータと共にその再生ソフトを書き込んでおいて、自動起動できるように仕立ててくれる機能がついていたからです。どんな背景で、コンテンツをどのように並べて…という「編集」を伴うのでオーサリングツールと読んだのですね。
 CAIのオーサリングシステムも、学習内容をどのように生徒に見せるのか、どんな問題を出すのかなどの編集をするためのツールです。手順を組立てるためのシートなんかがあって、ツールに指定したり指示を受けたりして適切な内容を入力していけばコースウェアが作れるのです。数時間の講習を受けることは最低限必要としても、プログラミングスキルを身につけるよりはずっと簡単です。つまりパソコンの知識が特になくても、CAIを導入しコースウェアを作り運用していくことが現実的になるわけです。
 そして作成したコースウェアを実行するのが「エグゼキュータ」です。オーサリングシステムにはコースウェアをソフトとしてパソコンで直接実行可能な形式に変換する「ジェネレータ式」と中間言語のような手順データとして出力し専用のプログラムがそれを解釈してコースウェアとして利用する「エグゼキュータ式」があります。中山教授のグループはデータを分離可能で再編集しやすいエグゼキュータ式を採用しました。
 エグゼキュータの機能は、単に問題を出して正誤判定するだけではなく、回答にかかった時間を計測したり、正答と誤答の統計をとったりもします。その結果はフロッピーディスクなどなんらかの方法で記録され、次回学習時に使われたり、コースウェアの改善にも参考とされます。初期の頃はパソコンがエグゼキュータを直接実行するので、いわゆるOSの役割も担っていたと思われます。
 CAIが役に立つものになるかどうかはコースウェアの出来次第です。問題を提示して、回答が入力されたら正誤判定して、結果を表示したらまた次の問題を提示して…というものでもコースウェアではありますが、ドリル問題をひたすら解いているだけではCAIでやる意味などありません。
 コースウェアの作成にあたっては、その単元を理解するのに必要な基礎知識や技能を詳細に分析します。例えば3桁までの足し算で必要な技能は161もあったそうです。技能と言っても高度な話とは限らず、自然に使っているものから直前に学んだことまでいろいろあって、これを難易度順に並べた時にその技能を獲得しているか確認できる問題を考えるわけです。すると、回答を間違った傾向を見ることで理解がおろそかになっている部分がわかるので、それを補える問題を解くコースに切り替えたりすることが可能になります。
 そして「どのように間違えるか」も洗い出します。間違い方によっておかしな理解の仕方をしていることを発見し、それを正すために一旦遠回りをする…ということができるようになるのです。
 中山教授は後に「子どもは正しく間違う」という言葉を残しています。これは、子どもには間違う「もっともな」理由があるということ、それを理解することで正しい理解に導けるということだそうです。こういうのは、ベテランの先生なら経験で身につけていることなのかもしれません。
 こういった準備の手間が多大なので、コースウェアの作成にはものすごい時間がかかります。数時間のコースウェアのために千時間以上かかることもざらなのだそうです。その長い時間の中でもオーサリングシステムにデータ入力しているのは三分の一程度で、あとは教科の分析と学習内容の作成に費やされます。でもここをしっかりしないと、使えるコースウェアにはならないんですね。

 クラスルームCAIで重視されているのが、生徒と先生とのコミュニケーションです。あるポイントまで進むと、画面に「どのように考えるかノートに書いて、書けたら先生を呼んでみてもらいなさい。」と出てそれ以上進まなくなります。仕方なく先生を呼び、ノートに書いた内容を見てもらって、先生から質問があったりなんかして、これで良しとなったら先生はパスワードを入力するので、それでやっと前に進めるのです。コースウェアの中で強制的に先生と話をする機会を設けているのですね。

 何度も間違えて、それを改善するための問題でも解決しない時も「先生を呼びなさい」と出ます。呼ばれた先生は対話の中から原因を探し、やり直させたり特別なメニューを呼び出して問題を解かせたりすることができます。もちろんそれ以外でも先生が呼ばれることがありますから、クラスルームCAIでの先生はひっきりなしにあっちこっちの机に飛び回ることになります。コンピュータが導入されて楽になるどころか、かえって大変なのです。質問などがなくても巡回することになっていますので、教師用のイスは必要ないことになっています。

 そう、「先生がめいめいの生徒全てに気を配るための道具としてのCAI」なのです。CAIについては当時「機械が勉強を教えるなど、なんて非人間的なんだ。生徒と先生が対話してこその教育なんだ」という批判があったそうなのですが、全く反対のシステムになっているのです。実際には一般的な一斉授業ではクラスの中くらいの学力の生徒数人を基準に、彼らがわかったようなら先へ進むというような教え方をしているそうですし、1回の授業で全員に発言の機会があるなんて事もなかなかありません。クラスルームCAIはそれまで実現し得なかった授業を現実に行えるシステムだったのです。

 一方で、僻地や過疎地などやむを得ない事情で少人数クラスになっている学校にもCAIを…というのが、中山教授の考えでした。二つ以上の学年を一クラスにして授業を行う「複式学級」では同じ教科書や問題を使えないことから交互に面倒を見る形になりますし、複式学級でなくてもクラスの人数の少なさから多様な意見を並べて考える機会にはなかなか恵まれません。こういう学校にCAIを導入することで、あたかも多人数のクラスで授業を受けているのに近い学び方ができるよう、これはコースウェアの工夫になると思いますが、そういったことも実践していったのです。


マイコン・クラスルームCAI

 中山教授は開発したCAIを「教師に取って代わるような個別学習」と区別するために「マイコン・クラスルームCAI」と呼ぶことにしました。専用のCAI教室を作り、そこにクラスまるごとで一斉にCAI授業を行うことからつけられた名前ですね。
 初めてのクラスルームCAIは、1977年に筑波研究学園都市にある茨城県新治郡桜村立竹園東小学校をモデル校として設置されました。モデル校に選ばれたのは単純に大学から近かったということと、そもそも学園都市の住人は研究者などが多いので教育について一家言ある人も多かろうから、ここで出た疑問や批判を克服すればどこへ持って行ってもきっと大丈夫なものができる…というのが理由だそうです。ただ親が親だけに良くできる子供が多く、CAIでの学習効果がどれだけのものかわからないのではないか…という意見も根強くあったようですね。

 1977年というと、いや製作したのはその前だから1976年頃ですか、日本ではまだまともなパソコンが登場していなかった時代ですから、しかもマイクロプロセッサにしたってZ80登場からわずか2年ですし、何もかも高価で、完成品のコンピュータと言えばようやくミニコンクラスがあるか…という頃ですね。なので、中山教授のグループはとある業者さんに手伝ってもらう形でオリジナルのシステムを作ることにしたのです。

 ということで製作されたのがこちら。
(「未来の教室」より引用)
 資料の説明を元に描いてみた図がこんな感じになります。

 当時まだマイコンも高価だったので、教師用端末にしかマイコンは入っていません。生徒が使う学習者用端末はキーボードと専用モニタに文字を表示する機能しかなく、それも全て教師用端末のマイコンが制御します。当然エグゼキュータも教師用端末で動作させます。
 マイコンは各学習者用端末のキーボードの状態を順にチェックし、何か押されていたらそれに対応する処理を行います。端末は全部で44台ありますが、それだけあっても人間が操作する分には問題のないレスポンスがあります(全端末で同時にキーを押しても大丈夫)。仕様上は60台までサポートできます。
 そのキーボードは、電卓のものを流用して40キー(20キーを二組)として搭載されています。キーの形をくりぬいた紙(いわゆるテンプレート)を授業ごとに交換することで、いろいろな目的に使用できるようにしました。
 専用モニタは家庭用テレビを改造したものです。そこに漢字かな交じりの文章が表示されます。漢字は小学校で使用するものを16ドットフォントで作りました(漢字ROMがない時代なので)。またROMも高価だったので、フォントをRAMに格納することにし、授業開始前に教師用端末からその時間に必要な文字(最大256文字)を送り込んでおくことにしました。実際には開始前に準備する文字の数はずっと少なく、イレギュラーな学習が必要になった時に足らない文字を追加で送り込むようになっているそうです。
 専用モニタに表示できるのは文字情報だけです。ですが学習時には図や絵を参照する必要が発生します。そこで各端末にB6判サイズのブックを用意しておき、表示されるメッセージに「○○ページを開きなさい」と出すことで、その補助としています。
 オーサリングシステムは大型計算機に構築されていて、そこで作られたコースウェアをフロッピーでCAI教室の教師用端末に持ち込みます。1970年代ですから現代のように効率的な入力手段があるわけでなく、特製の漢字エディタで文章を入力していたそうです。その後ワープロ「OASYS」が導入され、文書フロッピーを解析して作成した文章をオーサリングシステムで吸い出せるようになってかなり改善されました。
 資料での記述が少ないので、教師用端末のエグゼキュータがどの程度リアルタイムに各端末の学習進捗状況を表示できたかはわかりません。コースウェアを進める上で情報は持っているはずなのですが…。
 学習者用端末は、直径1.6mの丸テーブルに4セットずつ載せられて設置されました。それぞれ事務用品として購入できる丸いす(回転できるやつ)を備えて、それぞれの端末の前に置きました。回転イスなのは左右(そして正面の)クラスメイトの方を向いて話ができるようにするためです。
 床には暖色系のカーペットをひき、土足厳禁として床に座り込んで実験するなんてことも可能にしました。通常机の上(=端末の前)で作業しますが、複数のクラスメイトや先生と共同で実験してみる…なんて時は机の上では狭いですからね。
 実験用具も人数分用意されました。これは学習の進捗や内容によってそれぞれのペースで作業を進める必要があるからで、この時は全部手作りで用意されたそうです。

 当初は算数と理科でCAIの授業を行いましたが、期待以上の成果を上げることができました。CAIによってどの程度成績が向上したかは、比較のための「CAIを使わないで学習したグループ」を用意するわけにはいかなかったのでわからないのですが、体験者にアンケートをとるとCAI学習は「先生とたくさん話ができる」「友達といっしょに勉強できる」と回答する率が高く、システムを構築した目的がうまく達成できていることが伺えます。クラスの数に対して教室ひとつでは算数・理科を全てCAIに置き換えるわけにはいかない(月に2回程度実施)のですが、それでも全学年で実施できるようにコースウェアを充実させて、この竹園東小学校での実験を軌道に乗せることができたのです。


マイコン・クラスルームCAI-II

 竹園東小学校に設置されたクラスルームCAIは、実際にその授業風景を見学できるとあってたくさんの教育関係者が訪れ、そしてその教育効果の高さが評判を呼んで「ウチの学校にも設置してみたい」という希望が寄せられるようになりました。しかし、元々が手作りのCAIシステムなので複製品を作るのも手間がかかり、めいめいで作ってもらえるように情報を公開しても作ってもらえる業者が見つからないなど、手作りであることが普及の妨げになっていました。

 クラスルームCAIの普及のためにはちゃんとしたメーカーに製品を製造してもらい、メーカーの手で(つまり商売として)広めてもらうようにするべきと考え、これまでの研究成果を踏まえて希望通りの製品を作ってくれるメーカーを探した結果、パートナーとしてシャープ(シャープエンジニアリング株式会社、シャープシステムプロダクト株式会社)を選定しました。よく意図を汲んで開発してくれそうなのと、X1というパソコンが魅力的だったのが決定の理由だったそうです。

 X1がCAIにとても適しているのではないか、という意見は初代マニアタイプが発売されてすぐ聞かれるようになりました。それはやはりテレビ画面とのスーパーインポーズ機能と、専用TVディスプレイなら本体から制御可能だというのが最大の理由でしょう。Oh!MZ誌でもX1を学校教育に使用したという記事がたびたび掲載されましたし、「直読直解訓練用CAIソフトとそのLLへの応用」という論文ではX1turboを「正にそのために作られていると言っても過言ではない」と絶賛されていたりもします。
 パソコンならばグラフィック表示でそれなりの絵が描けます。地図とかならいいんですが、理科の授業で通常は実験でやるところをCG表示してしまうと、例えウソでも本当なのと変わらずに表現できてしまいます。しかしここでビデオ映像なんかを見せれば、実際にどうなるかが実物を直接見なくてもわかるわけです。その効果は中山教授のグループでも大学生用に作ったMILESTONE CAIという専用システムでビデオディスクによる映像表示を可能にしたことで確認しています。それが、汎用8ビットパソコンでかなり容易に実現できそうな気がしてくるわけですから、そりゃ魅力的ですよね。

 竹園東小学校のクラスルームCAIの置き換えの前に、まずX1DをベースとしたCAIシステムが開発され、僻地用として1984年4月に北海道鹿追町立上幌内小学校、北海道島牧郡島牧村立歌島小学校、岐阜県揖斐郡池田町立池田小学校に6台1セットとして導入されました。この時には後述するネットワーク機能はなかったようで、コースウェアをフロッピーで供給し、学習記録を別のフロッピーに保存するという「スタンドアロン構成」になっていました。

(「未来の教室」より引用)






 そして、都合1年半の開発の末に1985年4月から竹園東小学校のシステムをX1turboのものに置き換えました。それが「マイコン・クラスルームCAI-II」です。
 前述の通り、全ての端末をX1turboで動かすものに交代させました。図としてはこんな感じになりますかね。

 それぞれの端末がマイコンで動作するものになりましたので、エグゼキュータは各端末に搭載されることになりました。学習者用端末45台(あれ? 1台増えてる?)と教師用端末はシンプルLANというもので接続されており、コースウェアの内容を授業開始前にこれを経由して送り込むようになっています。コースウェアはHDDに保管されているほか、それぞれの学習記録もHDDに保管されて次回の授業やコースウェアの見直しに利用されます。あれ、そう言えばこれ市販されたシステムとしては最初期のHDD運用じゃないですか?
 「ビデオ画像送出装置」とあるのは、それまで暫定的にブックの形で絵や図形を見せていたやり方を、MILESTONE CAIのようにテレビ画面の映像として提供できるように「本来の姿に戻す」装置です。当初は1つの映像しか送れない(全ての端末が同じ映像を表示する)仕様でしたが後に改良され、複数の映像をおそらくVHF波に変調してケーブル伝送し、ディスプレイテレビにて選択できるようになりました。送出元はVHSデッキの他ビデオカメラを複数台用意するなどもしていたようです。
(「未来の教室」より引用)



 スーパーインポーズ表示の例。あらかじめビデオの編集が必要とは言え、映像に任意の文字列なんかを重ねて表示できるのはやっぱり魅力的ですよねぇ。
 この映像はコースウェアのシナリオに従って選択され、必要に応じてテキスト文字とスーパーインポーズして表示されました。また教師用端末からの指示で映像を映し出すよう一斉制御できるようにもされていました。
 以前のクラスルームCAIでは教室全体にマイコンがひとつだったので、教卓と生徒の端末をネットワークで結ぶ必要がなかったのですけれど、今度はそれぞれの端末が個別のマイコンなので本来やろうとしていたネットワーク接続ができることになりました。そこで既に市販されているLANを調べたのですが、不足したり余分だったりする機能があることから、CAI専用のLANを作ることになりました。名付けて「シンプルLAN」です。
 シンプルLANは次のようなスペックを持っていました。  このシンプルLANを通じて、授業前にはコースウェアのデータを配布し、一斉に開始・終了でき、それぞれの生徒の回答状況をモニタでき、双方向にメッセージをやり取りできるようになりました。またプリンタを共有して生徒用端末から印刷できたそうです。
 資料から具体的にどんな装置だったのかがわからないので上の図では10BASE-2みたいにバス型っぽく描いてますが、数珠つなぎということなのでちょっと違うか…。
 せっかくメーカーに作ってもらえるということなので、それにCAIが対応する教科を増やすためにはこれまでの数字キーばっかりではダメですから(特に国語とか)、CAIに最適なキーボードを作ることにしました。
(「未来の教室」より引用)
 見ての通り、X1Dのキーボードをベースに作られています。外装はX1D用のそのものですね。ただ子どもにいきなりタイプライタ型のキーボードを与えても文字を探すのでいっぱいいっぱいになるおそれがありますから、子どもが慣れている五十音順で文字が探せる配列を採用しました。しかもキーボード独特の「シフトを押しながら…」というのも不慣れでしょうから、1本の指で押せるようにしたのです。
 その配列はこんな感じになっています。一応左下隅にシフトキーはありますが、カナ小文字以外はそのまま押して大丈夫なように見えます。右端に刻印のないキーがありますが、上の写真のようにラベルを入れ替えて多目的に使えるようになっています。これはコントロール併用で28機能分割り当てられるとのことです。
(Oh!MZ'84年7月号より引用)
 余談ですが、この1本指キーボードで使われているマイコンのファームウェアを、月刊マイコン誌でライターとして多数の記事を書きパソコンサンデーのコメンテーター(評論家)として有名な高橋雄一氏が作ったのだと、そのパソコンサンデーの最終回にて本人から明かされています。ええっと、当時から高橋氏はかなり忙しかった気もするんですが、アドバイザーとか言いながらコンサル風でもなく最前線でガリガリコードを書いてらしたんですか…?
 以前は大型計算機にあったオーサリングシステムは、改めてパソコン用に開発しなおされX1turboでコースウェアを作ることができるようにされました。オーサリングシステム自身にデバッグ機能を備えて特別な環境でないと作成できないということがなくなり、また授業の直前に微修正をかけることも可能になりました。なお、CAI機器としてできることが大幅に変わりましたのでコースウェアは全面的に作り直しにはなりましたが…。
 エグゼキュータはROMから起動するので、システムディスクは不要です。電源を投入すると本体の初期化が完了し、シンプルLANを通じてコースウェアのデータが送られて来るのです。
 CAI室はそのまま使用されることになりました。全端末がマイコンになったため電源を強化した以外は机やイスなども変更されませんでした。
 ただ、X1turboの上にTVディスプレイを置くと背が高くなり、生徒の様子が見えにくくなることと、目線が上がって見にくくなるため、本体をテーブルの下につり下げるようにしました。勝手にいじられないようカバーもつけられました。なお電源は教師用端末のところにあるスイッチを操作すれば投入できるようになっています。

 このようにして作られたクラスルームCAIは、竹園東小学校だけでなくいくつもの学校に導入されるようになりました。容易に複製品を準備できることもあり、「CAIに興味はあるが導入に踏み切れない」という学校のために「移動CAI教室」というのも始めました。これは1クラス分まるまるのCAI設備を何日か貸し出し、実際に生徒と先生に体験してもらうものです。これにより竹園東小学校に見学に行かないとわからないという状況も解消できることになりました。

 このX1turboで構成されたクラスルームCAI・通称「X1-CAI」は、その後MZ-2500MZ-2800にも移植(専用ディスプレイテレビのMZ-1D24を使用することでスーパーインポーズ表示可能)され、「MZ-CAI」と呼ばれてX1-CAI同様広く使われることになりました。資料によるとそれぞれこんな機能が搭載されていたようです。

X1 X1turbo MZ-2500 MZ-2800
EXE AUTH EXE AUTH EXE AUTH EXE AUTH
TVコントロール
FUJIX スチルビデオコントロール
ランダムカセットコントロール        
VHDpcコントロール        
ローマ字入力          
マウス              
イメージスキャナ              
(ECO News No.2 1988.5より抜粋)

 「FUJIX スチルビデオコントロール」てなんでしょうね? このままググっても何も見つからないんですが…もしかしてTVフォトプレーヤー(2インチのビデオフロッピーに記録した静止画をテレビ画面に表示できる。パソコン接続用I/Fが別売りされてMZなどから制御可能な製品)でしょうか?
 ランダムカセットコントロールは具体的な使い方がわからないのですが、Oh!MZ誌1986年8月号の新製品情報ページにて紹介された「X1-CAI」で中学生向けとしてX1用データレコーダ・CZ-8RL1をベースに改造された「CZ-8RL1S」というRS-232C経由で制御できるカセットレコーダを使うとありますので、おそらく映像不要の音声だけを補助教材として使用するためのものなのでしょう。MZ-2500なら内蔵CMTでも同じ事ができそうですが、MZ-2800でもCZ-8RL1Sを使っていた可能性はありそうです。逆にX1に丸印が入ってないのが腑に落ちませんが…。
 VHDpcコントロールは、パソコンからVHDプレーヤーを制御できるI/Fですよね。確か一般向けにはX1用しか発表されてなかったと思うのですが、この表では逆にMZ用しかありません…RS232Cとかで制御できる汎用I/Fとかあったんでしょうかね…?

 バージョンアップされたMZ-2800用では純正ADPCMボード(MZ-1E35)もサポートされて、エグゼキュータの制御でPCM再生ができるようにもなりました。使えそうなハードはどんどん取り込まれていたということなんでしょうね。


その後のCAI

 WikipediaのCAIの項をよく読むと、人間の教師の代替としてのCAIの歴史が語られていて、行き着く先がいわゆるeラーニングなどの自習教材か、教室に置く視聴覚設備に絞られているように見えます。今はeラーニングやWebでセミナーを聴講する「Webinar」が流行っていて、そう言えばhdLabのHDL教材(販売終了)を再編集し書籍形式にした「HDL独習ソフトで学ぶ CQ Endeavor VHDL」「HDL独習ソフトで学ぶCQ Endeavor Verilog HDL」とか私も買ったのでした。こういうのはかつてストラットフォードC.C.C.がソフトとして販売し湯浅教育システムがヤルキーとして家庭に売り込んだ「人間不要の家庭教師」ですね。

 しかし中山教授のグループが志向したCAIはむしろ先生を必要とする、先生と生徒のコミュニケーションを促進するCAIでした。このクラスルームCAIはどうなってしまったのでしょうか?

 中山教授のグループとシャープシステムプロダクトはX1-CAI・MZ-CAIに続いて32bit版のAX-CAIを開発する予定だったみたいなのですが(一部の資料には記述があるが完成した形跡がない)、それを発展・汎用化してMS-DOSが動けばどの機種でもコースウェアを実行できるエグゼキュータ「UNIQUE」を開発し、1989年頃にリリースします。
 実はこの頃、文部省と通産省(いずれも当時)によって設立された「コンピュータ教育開発センター(CEC)」が学校教育用コンピュータとしてBTRONを採用しようとしていたところ、日米経済摩擦のあおり(アメリカがスーパー301条適用の可能性をちらつかせる)を喰ってMS-DOSマシンが選択可能(現実はBTRONが事実上の頓挫)になり、現場には不安が広がっていました。様々な場面でパソコンの互換性が問題になると予想されたがゆえの「標準パソコン」なのに、MS-DOSだからって何でもいいわけありませんからね。そこに、機種の壁を超えて共通の(そしてこれまで作られてきた)コースウェアが使えるCAIシステムが実現するとあって、各方面から注目を集めました。

 UNIQUEは汎用ゆえネットワーク機能をサポートせずスタンドアロン構成でしたし、X1のようにスーパーインポーズできたわけでもないので従来の全てのコースウェアを使えたわけではありません。ですがこれを発展させて、NetWareを利用することでネットワーク機能も実現した「スタディ」シリーズがPC-9801用を皮切りに次々とリリースされて、クラスルームCAIの広がりが加速されることとなりました。ICT教育ニュースの記事では2013年初頭までに累計約8,000校に導入されていると書かれているように、隅々まで行き渡っているとはいかなくても、かなりの学校で使われているようですね。

 クラスルームCAIが最初に設置された竹園東小学校は、1987年に市政に移行しつくば市立となった今でも公式サイトの「学校ICT教育」に見られるように情報機器を活用した教育が続いているようです。このページではCAIの歴史をたどりつつ、現在は「スタディノートポケット」などを活用している様子がわかります。
 スタディノートポケット…「スタディ」シリーズは、その後のいろいろな教育現場での用途に合わせバリエーションを増やしていきました。シャープシステムプロダクトはグループ会社再編に伴いシャープビジネスソリューション株式会社となりましたが、その「教育ソリューション」にて引き続きスタディシリーズを販売しています。

 またCAIという単語ではなくても、中山教授と似た狙いで新たにシステムを作る人達もいるようです。人工知能を活用して学習塾での指導を助けようという「Qubena」を見てみると、「教える」のページにて教材システムが学習者の理解の度合いを計測して教えてくれるようになっているみたいです。コースウェアとかがどうなっているのか興味深いですね。中山教授の研究成果のことをどこまで知っているのか参考にしたのかわかりませんが、もし無関係なのだとしたらそれでも似たようなものを狙うようになるというのは面白いです。

 中山教授は1997年3月に筑波大学を定年退官した後、「21世紀教育研究所」を設立して「スタディ」シリーズの開発・普及に協力。たくさんの伝道師を育成して全国各地にCAI教育を広めました。2010年1月11日没。
 東原助手は1995年に生まれ故郷に近い信州大学に移り、現在は信州大学学術研究院教育学系 教授を勤められています。長らく中山教授の片腕として、そして今では中山教授に代わり全国の先生方を支援されています。

 ここまでしっかりと研究・実践されたCAIなんですが…国の方針というかシステムとしてCAIを取り入れましょうというのではなく、それぞれの教育委員会にお任せになっている状態みたいなのが残念なんですよね。昨今の学校の先生があまりに忙しすぎると問題になっていますが、せめて教科の資料作りというのが適切なコースウェアを選択するだけで終わるようになっていれば、改善できるところもあったんじゃないかと…。
 1980年代のアメリカのCAI事情としては、コースウェアを作るのは教育機関か大学の先生で、小中学校の現場にいる先生はコースウェアを選ぶだけで良いようになっていたそうです。ストラットフォードC.C.C.はそういう仕組みの中のコースウェアの提供を担うつもりがあったのでしょうが…。

 「義務教育にプログラミング教育を取り入れるべきか」とか「コンピュータやネットのリテラシーを身につけさせるにはどうすれば良いか」とか、もう何年も議論が続く教育分野のお話ですが、まだまだ結論は出なさそうですかね…。


参考文献

●マイコン・クラスルーム 未来の教室 CAI教育への挑戦
 (筑波出版会 ISBN4-924753-01・絶版)

 中山教授の1986年時点での成果をまとめた本。学校教育にコンピュータを取り入れる意味、CAIに求めるもの、実際に製作し竹園東小学校やその他の学校に導入したクラスルームCAIの実態、導入の効果、当時のマスコミ記事、コースウェアの作り方など。CAIに対する中山教授の理念や哲学をやさしく理解できる内容になっている。

●コンピュータ支援の教育システム - CAI
 (東京書籍 ISBN4-487-75593-X・絶版)

 全6巻の「教育とコンピュータ」シリーズ、第3巻。教育の現場やその周辺にコンピュータを導入する意義や効果・課題を論ずるシリーズの中で、これと別巻「CAIコースウェア作成技法」が表題からCAIを主体に取り扱うことを物語っている。1987年の出版なので「未来の教室」で導入したクラスルームCAIが少しバージョンアップしていることを読み取ることができる。CAIシステムやオーサリングシステム、コースウェアの詳しい解説のほか日本におけるCAIの歴史も網羅されている。

ECO News
(株式会社21世紀教育研究所 No.110まで掲載)

 筑波大学の中山教授のグループとシャープ(シャープシステムプロダクト→シャープビジネスソリューション)が全国のクラスルームCAIユーザーやそれに興味がある人に向けて発行していたニュースレター。1988年4月に創刊し以後不定期発行(月刊を目指していたようだが…)。各地の学校の取り組みやオーサリングシステムなどのTips、新製品情報、時には時事情報など内容は多岐にわたる。担当者の忙しさ故に発行が滞りがちになり、「次号で詳しく紹介」と予告された記事が結局掲載されなかったりなどあるのが残念な所…。

●Oh!MZ 1984年7月号 特集2「ゲーム感覚で学習しよう」
 (日本ソフトバンク・休刊)

 勉強はつまらない、ならばゲームに似せて楽しく学ぼう…というテーマの元、投稿プログラムと市販の教育ソフトの紹介をメインに構成。コラムにて筑波大学のCAIについて触れている。

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