MZ-1E35
(MZ-2800用ADPCMボード)

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 あくまで個人的な印象なのですが、MZ-2800は発表された時期と相まって、なんだかX68000と張り合っているようなスペックを備えていたなぁと思っています。例を挙げると、

・65536色表示グラフィック
・FM音源搭載
・日本語ワープロ標準添付

など…。そう取り立てて言うような特徴でもないですし、搭載してない機能もたくさんあるので当時もそんな言われ方はしなかったのだと思いますけど…。

 ただ、そんなことをなんとなく思っていたこともあって、このADPCMボードが発売されることを知った時は「あ、足らない機能を補ってきたぞ」とかいう感想を抱いた記憶があります。

 そのADPCM機能をどうやって搭載したのかと言うと、なんとヤマハのY8950という音源チップを採用したのです。通称MSX-AUDIO、シャープのMZ用製品でありながら燦然と輝くMSXロゴ。

 ただ本当はMSX-AUDIOというのはY8950の別名とかではなくて、まずMSX-AUDIOというスペックがあって、それを簡単に実装できるのがY8950である…というのがより正確な理解のようですね。

 Y8950はADPCMの他、YM3526(OPL)コンパチのFM音源機能もあります。既にMZ-2800にはYM2203(OPN)があるのですから、これでダブルFM音源というわけですね(OPLが音作りの面でややチープというのは横に置くとして)。



 ADPCM機能を支えるメモリ部。DRAMが256KB、ROMはソケット(27512/27256用)だけですが64KB搭載可能です。もちろんこれらのメモリは80286のメモリ空間に割り付けられるわけではなく、Y8950の支配下にあります。読み書きのためにはY8950のレジスタ操作が必要です。
 こちらはバスコネクタ部。形状からわかるとおり、MZ-2800用のボードですが8bitスロットに挿入します。

 左端、下寄りのところに「JP」という文字がありますが、そのすぐ右にジャンパがあります。これは割り込みを選択するためのスイッチで、1側(向かって左)をショートするとIR11が、2側だとIRHDを使用することになります。

 その一方で、元々のZ80バスとしてのINT信号は、このボードでは使われていません。8bitスロットに挿すんだから2500モードでも使えることは使えるんですが、ポーリングで制御するしかないですね。こういう部分がMZ-2800用とカタログで宣言している理由でしょうか。

 これは端子部の拡大。左端、ピンジャックが2つ並んでいるので「これってステレオ?」とか一瞬思ってしまいますが、このボードはモノラル。ピンジャックも向かって左がライン入力、右がライン出力。

 ピンジャックの右にあるミニジャックも同様で、左がマイク入力、右がスピーカ出力。スピーカ出力はすぐ右のボリュームで音量を調節できます。これらの音声入力は、モニタ用ということで出力端子からもその音が出てくるようです。

 右端の角形コネクタは、MSX用に発売されていたミュージックキーボードを接続する端子。ヤマハのYK-01/YK-10/YK-20が有名ですが、松下や東芝・フィリップス(いずれも海外向けのみらしい)にも製品があるようですね。

 しかしですよ、MZ-2800にミュージックキーボードですか? シャープは純正品を発売することはありませんでしたし、ミュージックキーボードが使えるアプリなんかがあったという話は聞いたことがありません。というか、結局MZ-2800にゲームやエンターテインメント系のソフトが発売されることはなくて、ADPCMボード自体誰が買うのか? というアイテムなんですよね。音楽演奏させるだけならFM音源を搭載しているわけですし。

 ひとつだけ使用例を確認しているのは、X1-CAIを発展させたMZ-CAI(16bit版)でして、エグゼキュータの指令でPCM音声を鳴らすことができるというものです。汎用品として使えるので、MZ-CAI専用ではなく一般向けに発売したものの、そもそもはCAIにPCM再生を搭載したかったがゆえの商品化だったのかもしれません(MZ-CAIに対してもオプション設定だったらしい雰囲気はある)。でもそれだったらミュージックキーボードは不要ですよね?

 ADPCMボードにはシステムディスクなる、2DDのFDが1枚だけ付属しています。MZ-2800用なんだし2HDにすべきじゃないのとか思いますがそれは横に置いて、中身はというと"ADPCM.EXE"というファイルがひとつ入っているだけでした。ADPCM.EXEは常駐型のプログラムで、常駐させるとソフト割り込みによるAPIが提供されます。

 ただその機能というのがPCM用(録音・再生)のものしかなく、FM音源やミュージックキーボードなど見た目に存在する機能はサポートされていません。やはり名前の通り、ADPCMの録音・再生以外に使おうという意志が感じられませんね。

 PCM専用ならそれはそれで、せめてサンプルのPCMデータをひとつでも入れておいてほしかったな…再生できれば簡易的な動作確認とかできるのに…。

 とある情報を確認したくて、MZ-2500系を中心に扱うサークル「星くずばこ」の会報「★DUST BOX」を読んでいたんですが、ある号のお便りコーナーにて「ニッコーシのFMシンセサイザーボードを装着していると、起動時のシステムチェックにてADPCMボードが装着されていると表示される」という報告があるのを見つけまして。

 「★DUST BOX」のシステムチェックは、別に掲載プログラムが動かせるかを教えてくれるものではなく、ただ単にどんなシステムで会報を読もうとしているかを見せるだけのものです。それぞれの装着確認も特定のアドレスにレジスタがあるかどうかをごく簡単に見ているだけにすぎません。しかしですね、全くの別物ではなく、とても似通ったていると思われるボードが同じアドレスから見えるというのは、ちょっと不思議な話です。

 調べてみたところ、確かにシャープのソフトウェア総合カタログにFMシンセサイザーボードがリストされていました。もっと製品について詳しくわからないかとあちこち探したところ…。

 I/O誌の新製品コーナーにありました。この写真ではPC-88用のボードですが、その他にFM-7とMZ-2500にも発売すると書いてあります。ミュージックキーボードも接続できますし、写真のLSIにうっすら見えるのはMSXロゴですし、これはY8950でしょう。さらにいろいろ調べたところでは、FM-7以外用にはADPCMがサポートされていて、MZ-2500用の場合はDRAMを買ってきてはんだ付けしたら使えた…という話があるようです。

 使っている石が同じ、できることも同じ、配置されているアドレスも同じというニッコーシのボード。これが、CAIのオプション用に純正品として取り込まれた可能性、けっこうあるんじゃないでしょうか。そのまま取り込んだから、コネクタもそのまま残っている。もしニッコーシのボードに付属したソフトが割り込みを使ってなかったとしたら、MZ-1E35でも同じように使えることになります。是非とも、FMシンセサイザーボードの実物やソフトに、お目にかかりたいものですね…。



 ボードの真ん中にネジがついてはいるものの、いつものMZ用のボードならあるはずのパネルがついてないなぁ…と思ったら、拡張スロットのフタが専用の物になっていました。確かに、ボードの幅いっぱいにコネクタが並んでますもんね。

 しかしなぁ…MZ-1E30といい、ADPCMボードといい、コネクタが従来の開口部では収まらないからってそのたびに専用のフタを作ってどうするかな…。両方使いたいって人はどうすりゃいいの?

 …あれ?

 …これ下段側の開口部って、なんか大きくない?

 と思って、MZ-1E30付属のフタ(右)と比較してみたら!

 大きさ同じじゃないの!
 比較しやすいようにMZ-1E30のは180度回してありますから、下辺どうしを突き合わせてる写真になってるのですが、ADPCMボード付属のフタの下段の開口部は、MZ-1E30付属のフタの下段の開口部と同じ…つまり、MZ-1E30を下段に入れればADPCMボードと共存できるということじゃないですか…。

 しかしそれはそれで不思議だな…だって、ADPCMボードを入れたら、下段には従来品のような普通サイズの開口部しか必要としないボードを入れられなくなるんですよね。いやまぁ、片方だけはネジ締めできそうですが、やっぱり不安定ですし…。
 何か情報はないかと1989年4月現在というシステム構成図を確認してみると、8bitスロット側の表記が、何かを訴えているような…?

 MZ-1U09からは一旦上下ふたつに線が分かれていて、それぞれ3つとかふたつとかに改めて分かれています。これ、拡張スロットの系統図の描き方としては異例で、普通「どれでも選択可能」ということを表すために平等に(この場合5本)線が引かれます。しかしこれは、明らかにスロット単位で挿入できるボードが制限されているとしか思えませんし、どうもそういう読み方で合っているような気がします。

 というのも、ADPCMボードとMZ-1E30/MZ-1E32は別グループに置かれていて、しかもこれは上の系統は上段スロット、下の系統は下段スロットというように見た目そのままを表していると考えられ、つまりADPCMボードとMZ-1E30またはMZ-1E32のどちらかと共存可能と読み取れるわけです。

 ADPCMボードが出たのはMZ-1E30やMZ-1E32の後ですし、この図からするとモデムボード以外は外にコネクタが出ないボードですから、ADPCMボードに付属するフタの下段の開口部の大きさは、確信を持ってアンフェノール50ピン対応にできる…ということなのでしょう。

 割り込みが選択できるのも後から出たボードならではの事情と考えられ、IRHDを使うMZ-1E30と共存する場合はIR11を選択し、IR11を使っているMZ-1E32の場合はIRHDを選ぶことになっているのでしょうね…MZ-1E32の下に「2500モードのみ」と書いてあるけれど。むぅ? やっぱり謎だなぁ…。





 ということで、安心してMZ-1E30といっしょに装着。せっかく装着したのだし、活用したいですよねぇ…。

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