PC-1404G

 初の教育専用機です。Gは学校の頭文字と言われていますね。ここでの学校とは、工業高校とか産業高校とかいう、普通科以外に専門色の強い学科を対象にしたものになります。こういう学科では卒業生が即戦力として期待されるだけに、コンピュータを使用した制御実習をするわけですが、その教材として開発されたものということになります。基本的には入学時などに教科書や用具などと一緒に買うことになっているみたいです。

 パンフレットを兼ねた雑誌「PC BOX」などでその存在は知っていましたけど、初めて見たのは(今は火事でなくなってしまいましたが)長崎屋尼崎店の電器コーナーのショーケースでした。一般販売はしないはずのPC-1404Gがなぜあるのか不思議だったんですが…。そのチルトしたスタイルに驚きを覚えたものです。

 まず教育専用機についてちょっと触れておこうと思います。最初の専用機であるPC-1404Gは、PC-1401のような関数機能強化型ポケコンをベースとしたスタイルを持っていました。その特徴は

というものだと考えられます。私も、PC-1251の電池を初めて交換した時はあまりの高さ(当時のCR2023はひとつ500円、2つ必要なので1000円…)におののき、でも必要なので泣く泣く支出したという思い出があります(とは言え、PC-1415G〜1417Gではボタン電池に戻ったこともありましたが)。またPC-G813などは15000円くらいで売っているようでしたし、保証書を見ると3年間有効になっていました。

 「PC BOX」創刊号に工業高校でのポケコンを使った取り組みが紹介されています。それによると、その事始めはこんな感じだったらしいです。

 新潟県立長岡工業高校では、1982年電気科に「工業基礎」という科目が導入されたのを機に新入生に関数電卓を買ってもらいました。当時プログラム機能がある関数電卓は超高級機ですから高校生が買える値段ではなかったでしょうし、安い8桁電卓なんかよりはずっと高度な計算ができるという程度だったろうと想像されます。

 翌1983年、前年の実績をもとに今度は関数電卓ではなくポケコン(PC-1250)を採用します。繰り返しますが関数電卓にはプログラム機能はなかったでしょうから、前年の実績とは生徒が各々勉強のための道具として電卓を所有することの効果が確認されたということなのでしょう。それを使わないとできない宿題も出せるわけで、高い教育効果が期待できます。
 ポケコンが導入されたということでカリキュラムにも変化が生じ、BASIC言語の習得が組み込まれました(プログラミングやフローチャートなど含めて11時限と書かれている)。将来パソコンを使うことを考えてもその予習ができるというわけですね。

 そしてその翌年、1984年には長岡工業高校を含む新潟県下の10校の工業高校にてPC-1404Gが採用されました。わずか2年、ポケコンに限れば1年ですごい広がりようです。しかもメーカーの協力をとりつけ、専用機まで登場する有様です。いや、記事ではかなりあっさりPC-1404Gが登場してますので何があったのかさっぱりわからないのですが、長岡工業高校だけで1学年360人くらいいるようですし、そんな発注があったらメーカーも何事かと思うでしょうね。以後仲介したと思われる株式会社ナガイ(現在のポケコン関連事業はナガイSCT株式会社が担当)とメーカーと学校の先生の三人四脚(?)で企画が進められるようになっていった模様です。

 ポケコンに注目したのは長岡の先生だけではないようで、PC BOX No.4(1984年11月号)には埼玉県立熊谷工業高校土木科の取り組みが紹介されています。ここでは構造計算に関する問題をPC-1245にて生徒に解かせており、生徒全員がポケコンを所有しているのかは不明ですが習熟度別個別指導を可能にするアイテムとして活用していたようです。実は「PC-1245(G)」というモデルがあるようで、写真でしか確認できてはいないのですが、専用設計品ではなくとも教育用としてまとめて納入されたカスタムモデルがあるのではないかと思われます。

 このように広がりを見せる教育市場、後にI/Oが扱えるようになると太平洋工業というメーカーが組み合わせると制御学習に使用できるキットを発売するようになり、ついにはライバルであるカシオも参入するようになったほど、魅力的だったみたいですね。






 キー配列は、PC-14xx系列ではありますが関数部が少なくなっており、後のPC-1431/1430と同じになっています。と言いますか、この配列がPC-1431/1430にも採用されたと考えるべきでしょうか。

 キーが少ないということはそれだけ命令や関数も少ないということを示唆するのですが、実際いろいろ減っています。'¥'がどのキーにも割り当てられてないようなのですが、CHR$()がないのでそもそもキャラクタとして持っているのか確認できません。  




 …ということはですね、まさかとは思いますが、PC-1404GのCPUは4bitだったりするなんてことはないのでしょうか? PC-1431/1430の関数が少ないのは高速だが低機能の4bit CPUを採用したからだとも考えられるのですけど、PC-1404Gで機能を落とさないといけない理由があるようには思えないからです。

 ということで、構造の調査を兼ねて分解してみましょう。見るからに「ボタン電池用製品に無理やり単三電池収納スペースをくっつけました」と言わんばかりのスタイルですが、その裏面をかたちづくるパーツは鉄製で、一方電池のフタはプラスチックでできています。




 基板を見るとボタン電池の電極などのパターンとかありませんから、そもそも単三電池専用として設計されたと考えられます。とすると、今度はPC-1405GとPC-1415Gの関係が気になるな…あれこそボタン電池用の基板に単三電池をつないでいるのか…? いや、電圧が違うから昇圧回路があるはず…。




 …ということで、普通にSC61860(ESR-H)シリーズでした。セラロックには768と書いてありますので、スピードアップして768kHz動作するようになった時代の製品であることがわかります。




 他のポケコン同様ハードカバーがついているのですけど、裏面の形状のせいで使用時に収納することができません。これはちょっと不細工…。

 命令や関数が少ないのはコンピュータ初心者向けに…という思いがあったのかもしれませんが、「易しくするために機能制限」よりも「最初は代表的なものを教える」方が伸びる力のある子には有効。と気づいたかどうかは知りませんが、後の教育用ポケコンは年を追うごとに機能アップしていきます。ついにはこれが20年前にあったらパソコンを食っただろうと思われるような驚愕スペックに…。
 Gシリーズでコンピュータを学んだ人もたくさんいるでしょう。この初代機から30年くらい経過しているわけですから、今ではいいおっさんなんでしょうね。技術者教育を影で支えた名機…ということになるのでしょうか。

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