PC-1401

 PC-1250/1251の後PC-1245などバリエーションを広げていく過程で、おそらくそれまでのユーザーから吸い上げたと思しきひとつの方向性が、「電卓機能の強化」。電卓の範疇にあるポケコンですが、パソコンのようにBASICのみをユーザーインタフェースとするのは、「数式通りに入力できる」分かり易さはあるものの多少冗長な印象を拭えません。さらに、サポートする関数がパソコン譲り程度の機能しか持たず足らないところはプログラムでカバーするというコンセプトも、誤差や計算速度の点で難があるものでした。

 そこで登場したのが、関数機能を強化したポケコン・PC-1401。以後「関数ポケコン」として、PC-14xxシリーズは多数のファンを獲得するヒット商品となったのです。

 結果的には「これ以外はない」というデザインなんですが、PC-1245によって桁を減らしても支障がないということが確認された液晶ディスプレイ、それによって数字キー部分をフリーにして、関数電卓ばりの関数キーを設けるというもの。キーを押しやすくするために全体の幅を広くして、やや大柄にはなりましたが使い勝手は向上しました。
 このスタイルは以後も引き継がれ、各部のサイズはいろいろ変わりましたがPC-E/PC-Gシリーズになっても同様です。それどころか、カシオも関数機能を強化したモデルは同じスタイルになっているほどです。

 PC-1401の大きな特徴が、テンキーの上部に集められた関数電卓さながらの関数キー。カタログによればPC-1401に搭載された関数は59種類。BASICで使える数はもう少し減りますが(統計関数は電卓モード専用)、当時1万円前後した関数電卓と同等の機能を持っています。BASICに限ってみても、

  PC-1251 PC-1401
三角関数 SIN, COS, TAN, ASN, ACS, ATN SIN, COS, TAN, ASN, ACS, ATN,
HSN, HCS, HTN, AHS, AHC, AHT
指数関数・対数関数 LN, LOG, EXP LN, LOG, EXP, TEN
累乗・累乗根 SQR SQR, SQU, CUR, ROT
変換 DMS, DEG DMS, DEG, POL, REC,
その他 SGN, ABS, INT, PI, RND SGN, ABS, INT, PI, RND
FACT, RCP

というように、三角関数を中心に強化されているのがよく分かります。ハイパボリックなんて当時どこのBASICにもありませんがな(その分必要とする人も多かったわけではないんでしょうけど)。

 ところで、関数電卓そっくりになっている関数キー部分なんですが、これはどうやって決めたものなんでしょうか。普通の電卓だけでなく関数電卓もたくさんのモデルが同時に発売されているもので、パッと見にはどれも似たような電卓ですけど、関数電卓の場合はサポートする関数の種類によってキーの機能や数、そして値段が変わっていました。集積化が進んだとは言え、全ての機能を詰め込むのはやはりコストがかかったんでしょう、それぞれのモデルの性格や用途を設定して機能を選んでいたようです。なら関数ポケコンの設計時にも何かの考えがあって関数キーを決めていたはず…。

 電卓の古いカタログを見ていたら、PC-1401そっくりの配列の関数電卓を発見しました。型番をEL-506Hといいまして、そんなに高機能なものではありませんが、16進数を使えるのが特徴ですね。EL-506一派はサフィックスの違いでこれまたバリエーションが山のようにあるのですが、この配列になっているのはEL-506Hだけのようです。なお、配列だけならEL-514やEL-550というのもあるのですが、あまり多数でもなかったようです。1982年頃の登場のようですから、PC-1401よりも前ですね。
 キー部分を拡大してみました。基本的には同じ配列、同じサイズ。もちろん細かくは、16進入力用のキーや統計関数の位置、n!の位置が違うというのはありますけど、もはやこれは「切り取ってそのまま持ってきた」という表現がぴったりくるようなそっくりぶり。
 だから上で液晶の大きさを縮めることでスペースを確保したと書きましたが、順番としてはまずEL-506Hの機能をそのまま実装することにして、使い勝手も踏襲するつもりで大きさもそのまま持ってくるために、この部分を上から下まできれいに確保したということなんでしょう。

 また使い勝手という意味では、関数電卓と同様に右下の「=」キーで答えが出るようにするため、本来"P"キーとENTERキーで上下に挟まれたところにあった「=」キーを右下に配置し、代わりに「,」を置いています。ここはDEFモードで起動を指定するキーなので、マニュアルにも他機種から移植する際には注意せよと書かれています。

 そして関数キーを効果的に使えるようにするのが電卓モード。一度は関数電卓の派生というカラを破ったポケコンですが、意外にもここで先祖返りしてしまいました。しかし関数電卓の特徴である、表示されている値に対して関数キーを押せば即計算結果が表示されるという使い勝手を踏襲するのはこれが一番です。
 しかしながらその使い勝手をBASICでも享受できるようにしたのが「ダイレクトアンサー」機能で、RUNモードで数値入力したり、何らかの計算結果が表示されている状態で関数キーを押すとその計算結果が表示されるようになっています。また最後の計算結果を↑または↓キーで呼び出せる「ラストアンサー」機能もここから登場。これ、地味に便利なんですよね。
 その他電卓モードでは、メモリー機能もありますし表示桁数の設定や表示モードの切り替えもサポートしています。カッコ付き演算もできます。

 それぞれのモードでの表示の違いがこちら。
 まず電卓モードでは電卓同様ゼロ表示が基本で、しかも右端でなく4桁開けてあるのは指数部を表示するため。液晶の左下、モード表示はCALの上にインジケータが点灯しています。
 それとBASICモードでは、プロンプトはそれまでの(そして現在に至るまで)標準的なプロンプトである「>」表示。BASICキーでモード切替をするようになっていて、RUNとPROそれぞれにインジケータがあります。

 ちなみに、電源を入れると前のモードがなんであってもCALモードになります。基本的な使い方はそっちということなんですかね。

 こうして誕生した関数ポケコンは、それまで機能不足や操作の煩わしさで不満を抱いていた人たち、とりわけ理系学生やエンジニアにヒットして、機能強化しながら代を重ね、ポケコンの実質的主流になっていったわけです。


EL-5500

 PC-1401は当然ながら輸出されていたわけで、もちろんそれはPC-1401として輸出されていたのですが、なぜかアメリカには関数電卓を指すEL型番で展開されていたものがありました。で、これがPC-1401の米国版のEL-5500。POCKET COMPUTERではなくSCIENTIFIC COMPUTERと銘打たれています。なぜかRAM容量が半分になってます。
 こちらはパッケージ。"WITH TEXT"なんて右上隅に書いてありますけれど、WITHOUTな製品なんてあったんでしょうか…。
 "WITH TEXT"の意味するところのテキストブック(右)と、通常のマニュアル。マニュアルは国内仕様や他の機種と見た目に変わりありませんが、テキストブックの表紙がカラーだったりちょっと凝っているように見えます。特段易しく書いてある印象はないのですが、例題を多くして実用向きにしてあるようです。

EL-5500II

 こちらはPC-1401の米国版のEL-5500II。メモリー半減版のEL-5500とは違い、オリジナルと同じ仕様になっています。
 こちらも、カナが表示できないだけに外人が使っても違和感ないと見たか、中身についてはローカライズしてないようですね。
 マニュアルだけでなく参考書(テキストブック)付きを訴えるパッケージ。
 他機種と同じマニュアルと、参考書としてのテキストブック。

 米国向けに輸出されていたポケコンがどれもEL型番だったわけではなく、EL-5500/5500II(PC-1401)、EL-5510(PC-1421)、EL-5520(PC-1450)、EL-5500III(PC-1403)、EL-5400(PC-1430)に限られます。その他は雑誌POPCOMが逆輸入したマシン語マニュアル(シャープ刊)の対象機種がPC-1250/1251だったように、普通にPC型番で輸出されていたようなのですが、この違いはどこから?

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