京阪電鉄8000系
8000系7連(第3編成)による特急淀屋橋行。
この撮影の時点(1994年7月28日)ではまだ2階建て車の組み込みは実施されておらず、登場時のままのある意味非常に整った編成美を見せていた。
8000系は1989年の鴨東線開業による運用増に対応する新車としてロールアウトした第1編成7輛と、この時の特急の7連統一に伴う3000系6連5編成への増結用中間車である8500形5輛に始まる、京阪電鉄にとって5代目の特急専用車である。
一見したところ一つの会社を代表する特急車としては非常に地味な印象の車両であるが、この系列の真価は見た目ではなくその内装の素晴らしさにこそある。
何しろ、その素晴らしさは鴨東線開業時に当形式の到着を待って先行する3000系特急を見送る乗客が多数現れたというエピソードを生んだ程であり、その大反響に驚き且つ気を良くした京阪首脳陣が3000系の更新修繕計画を放棄して、当系列の量産とまだ使える(そして普通の感覚では非常に素晴らしい設計の)3000系の廃車を一気に進めたという話が伝わっている。
8000系の増備は1990年から1993年にかけて順次実施され、7連10編成が竣工した所で一旦終了とされたが、1995年度に試験投入された3000系ダブルデッカー車の反響を受けて1997・1998年に8800形ダブルデッカー車の追加組み込みが実施され、最終的には8連10編成の合計80輛が出揃った。
当系列は京阪特急の直接の競争相手であるJR西日本が本腰を入れて新快速の拡充に乗り出し、221/223系という破格の近郊電車の大量産を始めた事への対策という意味合いがあり、特別料金が不要な速達列車に許される最高水準の客室設備を用意してこれに対抗した京阪電鉄首脳陣の積極的な対応は大いに評価すべきであろう。
ハードウェア的には6000系以降の通勤車と共通するアルミ押し出し型材組立構造の車体を持ち、各部機能部品についても6000系以降と共通設計の部分が多い車両であるが、唯一その性能を決定する電装品についてのみは先代特急車である3000系との共通性が強く、3000系では65Km/h以上で5Km/h刻みであったのが45Km/h以上で1Km/h刻みに改良された界磁位相制御による定速度制御機能、そして3000系と同一の端子電圧375Vで定格出力175Kwを叩き出すTDK-8161-A主電動機と、走行性能レベルでの完全な上位互換性を備えている。
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