PX-R820Te / Plextor


インターフェイス:Fast SCSI (50pin 10MB/s)

バッファ容量:4MB

ローディング方式:トレイ方式

読み出し速度:1x・4x・8x・9〜20x(CD-RWは8x上限)

書き込み速度:1x・2x・4x・8x

対応フォーマット:CD-ROM Mode1,CD-ROM Mode2、CD-ROM XA CD-DA、CD-Extra、CD-TEXT、Video CD、Photo CD、CD-I、CD+G、マルチセッション

書き込み方式:Disc At Once、Track at Once、Session at Once、パケットライト


 1999年10月に薙澤君から購入した、当時最速の8倍速書き込み対応CD-Rドライブの外付けモデル。

 具体的にはPX-R820Tiという内蔵版のベアドライブをPlextor自社オリジナルの専用外付け筐体に納めたモデルで、この時期の事であるからインターフェイスは当然Fast SCSIである。

 購入時点では既に後継機であるPX-W8220Teがデビューしていたが、CD-RWというメディアに不信感があったのと、たまたま薙澤君が半年程死蔵していたこれを買わないか、と話を持ちかけてくれたので購入と相成った。

 CD-RWの件は元々私がMOユーザーであった事が影響している(書き換え回数が1000回程度と聞かされて、何時壊れるか知れたものではない、と思った)が、余計な機能は無い方が良い、という判断があったのも事実である。

 ちなみにこのドライブそのものの出来は抜群で、バッファメモリが4MBも搭載されていた事もあってバッファアンダーランによる焼き損じがほぼ皆無(当然、為すべき事は為さねばならないが)であるなど、筆者が扱ったCD-R/RWドライブ中では最良と今でも断言出来る製品である。

 無論、このPX-R820Tに続く-W4220T・-W8220Tはいずれも優れた製品で、その後継である-W124TSや-W1210TSもなかなかの出来であったが、筆者としてはやはりこの-R820Tをもって最良としたい。

 何より書き込み品質、特にCD-DAのそれの良さは印象的で、この点直接の後継である-W8220Tは(個体差もあるかも知れないが)微妙に劣る印象を受ける。

 この機種に内蔵されていたPX-R820TiはTLA#0203で、世間的に“確実に当たりロット”とされるTLA#0403よりは前の製品だが、今も昔も筆者はその“当たり”である必要がある様な使い方をしないので、“当たり”か否かについては定かではない。

 Plextorは伝統的に三洋製チップセットを使用していて、このPX-R820Tでも当時最新の8倍速対応チップセットが採用されていたのだが、実はこのチップセットはCD-RW対応の後継機であるPX-W8220Tに搭載されたものと共通で、つまりこのドライブの場合CD-RWに対応可能なのに敢えて非対応として製作された事が判る。

 このチップセットはCD-R/RWシグナルプロセッサであるLC895926とCD-R光学記録コントローラであるLC895840のペアで構成されていて、元々は太陽誘電との共同開発で生み出された製品であり、チップセット自体のスペックとしては24倍速CD-ROM読み込みまでサポートしている。

 また、特にPX-R820T・−W8220T(初期のTLA#010xまで)等に搭載されたLC895926 RC8ではEFMの意図的に誤った配列を通常の正しい配列に変換するなど、本来はプロ向けの非常に高度な機能が満載(それ故、このチップセットは後に業務用のPLEXMASTER01/02にも搭載されている)で、しかもこれらの製品ではそのEFM変調関連の特殊機能がファームウェアレベルで有効とされていたため、CD-R焼きを趣味とする人々の間で一時すさまじい争奪戦が発生した(ちなみに同時期の松下製ドライブにも同じくLC895926 RC8が搭載されていたが、こちらはファームウェアでこの機能が有効になっておらず、不人気であった)事で知られている。

 太陽誘電との共同開発という一件でも明らかな通り、このチップセットは太陽誘電製メディア、特にチップ開発段階で存在した8倍速以下のメディアで最良の性能を発揮するが、色素が同系で特性的に近くしかも品質が飛び抜けて優秀であったTDK千曲川工場製の8倍速以下のメディアについても素晴らしい書き込み品質を実現している。

 更に言うと、このドライブの場合はPlextorが非常に良く作り込まれたファームウェアを用意した事もあって、かなり品質が低下した今の太陽誘電製メディアでさえ望みうるほぼ限界に近い優れた書き込み品質を維持し続けている。

 また、特筆すべきは搭載されたレーザーピックアップや冷却ファン、それにスピンドルモーター等の消耗部品が非常に良く吟味されている事で、製造から5年を経てなおその性能に衰えは見られない。

 只、この製品の筐体はPX-R412CeやPX-12TSあたりから採用されたPlextorのオリジナル品で、プラ外装で金属ケースを包むシンプルながら扱いやすいデザインなのだが、搭載電源の品質や出力の点でやや不満があり、このあたりについてはもう少し吟味しても良かったのではないかと思う。

 この辺は製造コストもかかわるので難しいが、電源性能は書き込み品質に直接影響する重要な要素(実際にこのPX-R820Tiを取り出して、電源性能に定評のあるSUNの411筐体に組み込むとヘッドフォン端子のノイズが激減した。つまり、この筐体はそれだけノイジーな電源を搭載していたという事なのである)なので、ここに投資する事はエラー対策の意味も含め決して無駄ではないと筆者は考える。

 何やら否定的な事を書いてしまったが、筆者にとってこれが最初のCD-Rドライブであり、それ故にトラブルらしいトラブルに直面することなく過ごせた事は、本当に幸運な事であったと今にして思う。

 このドライブに関しては一度後輩のM君に売却したが、再度買い戻して現在に至っている。


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