MULTI 16 (MP-1605U) / 三菱電機


 国産初の16bitビジネスPCであったMULTI 16(初代)のラインナップ中、最上位のカラーCRT搭載モデル。

 RAMは標準で256KB、追加で128KB、合計で384KB搭載され、FDDも5.25インチ2Dドライブが2基搭載されていた。

 但し、この384KBのRAMの内、96KBは640*400 8色のビットマップグラフィック画面に割り当てられているので、プログラムエリアには288KBしか使えない。しかも、漢字フォントは標準搭載されていないため、日本語CP/M-86ではJIS第一水準の約4000文字のフォントをディスクからロードするという方法を採っている。そのため、フォント展開にメインメモリが約128KB必要で、漢字ROMカードを挿さない場合には高価な増設メモリが必須であった。要するに、このマシンで日本語表示を望む限り、進むも地獄、退くも地獄という状況だったのである。

 ちなみにこのモデルに搭載されていたカラーCRTは相当高価だった様であるが、流石はフラグシップモデル用だけに一つのリファレンスたりうる非常に優れた品質であり、以後随分長い間これを凌駕する画質のCRTにお目にかかる事が無かった程の優れ物であった。

 このMULTI 16シリーズのテキスト表示はグラフィック画面と共用で、16*8もしくは16*16ドットのフォントを直接640*400のグラフィック画面に描くという、今のDOS/Vに近い画面構造であった。しかも、この機種の場合今のPCに見られる様ないわゆるグラフィックコントローラは搭載されておらず、無数のIC/LSIを組み合わせた殆どディスクリートに近い構成のグラフィック回路が実装されていた為に描画は決して高速ではなく、アセンブラで直接VRAMエリアを叩くプログラムを書いてすら必要な描画速度が得られず、困った記憶がある。

 私が最初に手にしたPCはこのMP-1605で、まともに漢字表示を行う為に128KBの増設メモリカード(MP-128ZM)が搭載され、専用プリンタであるMP-03PRJを接続する為にオプションのセントロニクス規格準拠のパラレルインターフェイスカード(MP-01CNI)が挿された状態で届けられた。

 このマシンはOSとして日本語CP/M-86 Ver.1.0 Rev.1.1(定価は確か5万円)がバンドルされており、よく判らない大部のマニュアルが何冊かと3枚のシステムディスクと1枚の国語辞書ディスク(そう、最低限ではあったがカナ漢字変換が搭載されていたのだ)が添付されていた。

 なお、このCP/M-86にはエディタ、アセンブラ、デバッガという対応アプリケーション開発に必要な3種の神器(リンカは有ったかどうか思い出せない。多分無かった筈だ)やBASIC86(スタンドアロンM-BASICのCP/M-86版)といったツール類が収録されていたが、当然の様に実用的な付属アプリケーションは1つも無く、この機種しか持っていなかった中学・高校時代、私は良く判らないままにひたすら8086/8088用マシン語命令セットの勉強に明け暮れたことであった。

 余談になるが、Excel出現以前にMicroSoft社のDOS用表計算ソフトとして知られたMultiPlanは、本来このMULTI 16の為に三菱電機の依頼で開発されたものであり、それ故“Multi”という語が名に冠されていた。


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