X1G model 10 (CZ-820CB) 付属キーボード / SHARP


 私にとって2つ目のキーボード。

 キー配列はこれもJIS準拠で、ファンクションキーが5つしかなく、通常ならBackspaceキーが配される位置に「BREAK」キーが置かれ、「INS(Insert)/DEL(Delete)」キーが「Return(Enter)」キーと「[」キーの間に配されているのが珍しい。

 Caps LockキーとGraphキーがSpaceバーの左に配されているのはMULTI 16と同様だが、その順番は逆で、MULTI 16がCaps Lock→Graph→Spaceだったのに対してこちらではGraph→Caps Lock→Spaceとなっていた。

 また、ご存じの方はご存じの通りこのキーボードのカーソルキー配置は滅茶苦茶で、左から「←」・「→」・「↓」と並んで「↓」の上に「↑」が置かれるという、実使用上の利便は全く考慮されない凄い代物であった。

 この問題は「↑」を左隣の「,」と、「↓」を「→」とそれぞれ入れ替えればそれで簡単に片が付いた筈なのだが何故かそのまま放置され、結局最後のX1であるX1twinまで踏襲されてしまった。

 このシリーズは漢字変換を前提としていなかった為か特別な漢字変換用キーを用意していない。

 また、Xシリーズは伝統的にファンクションキーが通常のキーではなく、何故か横に細長い箱状のキーとなっているのだが、X1系ではそれでさえF1〜F5までしか用意されていなかった。

 恐らくこれは、コマンド入力に省略形が使えなかったMicrosoft BASICを搭載した各機種では、その代替機能を実現する(一般に使用頻度の高いコマンドが割り当てられていた)ファンクションキーが非常に重要であったのに対し、X1系でバンドルされていたハドソンオリジナルのHu-BASICではコマンドの省略形での入力(例えば“RUN”は“R.”、“LOAD”だと“L.”といった風に頭文字+ピリオドで構成されていた)が可能であって特に必要が無かった事に原因があると考えられるが、何とも打ちにくいキーであったのは確かである。

 機構的にはこれは、メンブレンゴム一体成形によるラバードームタイプのキースイッチ(カーボン端子)が基板上のスイッチパターンに接触してスイッチを入れるタイプの極めて安価な造りのキーボードで、テンキーにきちんと四則計算に必要なキーが配されている事と合わせて如何にも電卓を量産しているメーカーらしい設計ではあった。

 当然というかキータッチそのものは非常に劣悪で、特に筆者の場合、それはそれで贅を尽くした設計だったMULTI 16の直後に触った事もあって、印象は最悪であった。

 なお、この製品については電磁メカデッキ搭載のmodel 10付属という事で巻き戻し・停止・早送りのデータレコーダ制御キーが追加されたタイプとなっており、それが特徴といえば特徴である。

 この系列のキーボードで一つ評価できる点があるとすれば、それはキーボード側にもマイコン(シャープ製80C48。Intelのセカンドソース品で、8080系のCPUを制御向けに最適化したコアとRAMとROMが一緒に集積してあり、1チップで回路の殆どが完結する。なお、上位機種としてメモリ容量の大きな80C49が存在する)が内蔵されていて本体側サブCPUとの間でシリアル通信を行う(キースキャンコードは一旦マイコン内のバッファRAMに貯め込まれてからパケット単位で送信される)為に接続ケーブルが僅か3本で済み、更にその接続用コネクタが安価で丈夫なオーディオ用のステレオミニプラグとなっている事で、このあたりは家電メーカーとしてのシャープの面目躍如といったところである。


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