GA-586S / GIGA-BYTE


CPU Type:Socket 7

Chip Set:SiS 5571 “Trinity”/ SiS

FSB Clock:50, 55, 60, 66, 75MHz

Onboard L2C:256KB

RAM Module Type:72pin EDO/Fast Page Mode DRAM SIMM *4

Ext.Slot:32bit 33MHz PCI *4, 32bit 33MHz PCI/ISA *1, ISA *2

Power Supply Type:AT

Board Form:Baby AT

BIOS:Award Modular BIOS v4.51PG


 大学同期のとある知人が1997年夏に買った、彼にとって最初のマザーボード。

 偉そうな事を書ける程触った訳ではないが、非常にエポックメイキング且つ珍しいチップセットを搭載しているので、ここに記しておこう。

 この製品は当時のGIGA-BYTE製マザーボードのラインナップ中では下位に位置付けられていて、事実GA-586HX2あたりと比べれば安価(もっとも数千円程度の価格差)だが、機能のカタログスペックについてはむしろこれを上回ってさえいたという、曰く付きの代物である。

 これは、このボードに搭載されたチップセットがサウスブリッジとノースブリッジを統合した、まともな量産製品としては恐らく史上初(後日知った所によれば、香港のAsian DigitalがASICによる486系CPU対応の1チップコントローラを製品化していて、搭載マザーボードも出していたらしい。又、筆者の記憶が正しければ80年代末か90年代初頭には産業用組み込みPC向け1チップコントローラは既に存在していた筈で、某誌のニュース欄で読んだ憶えがある)の1チップコントローラチップであるSiS5571であった為で、上記の通りPCIスロット数は5本、それも全スロットバスマスタ対応な上にFSBが75MHzの場合でも非同期(疑似同期)動作によるPCIバスの33MHz駆動が可能で、なおかつSocket 5/7系Cyrix製x86互換CPUの特徴であるCPU-メモリ間のリニアバースト転送をサポート(当然ながら、より高速なIntelバーストの使えるIntel純正チップセットにはそんな機能は存在しない)するという、同時期の最新トレンドを盛り込んだ欲張りな仕様だった。

 要するにこれはCyrix製x86互換CPUへの対応を重視した低価格チップセットという事で、恐らくVAR業者への供給に主眼をおいた設計だったと考えられるが、これらの機能はいわゆる自作ユーザーにとってもかなり魅力的であった。

 5571がバスマスタPCIスロットを最大5本サポートという、同時期のサーバー用チップセット(Intelで言えばPentium PRO用の450GXが4*2=8スロットバスマスタを実現していたが、これとて2chのプライマリPCIバスを備えるからこそのスペックであった)でも稀な仕様が実現したのは、ノースとサウスが1チップ化されたお陰で、サウスブリッジという高負荷のPCIバスマスタデバイスの分がスロットに回せる様になった為であった。

ちなみにこの5571に与えられた愛称である“Trinity”は、当時のチップセットで一般的だったCPU-PCIブリッジ+データパスユニット+PCI-ISAブリッジという3チップ構成(SiSの先行チップセットで言えば5511/5512/5513などが該当する。只、Intelなどのチップセットではデータパスユニットが2つで4チップ構成のものが結構あった)を1つにまとめた事を“三位一体”に見立てた事に由来しており、ワンチップ化実現に対するSiS技術陣の意気込みが偲ばれる。

 実は5571はFastPageDRAM、EDODRAM、SDRAMの3種類のメモリに対応しており(その一方でECCは非対応だった)、SDRAM用のソケットを付ける事も可能であった筈だが、この製品が出た時点では未だSDRAM DIMMは市場で一般的とは言い難く、また2クロック品と4クロック品の混在等の互換性問題も多かったから、コスト面も考慮して無理のないSIMMのみの構成とされた様だ。

 只、このボードには一つ欠点があって、低価格化を重視したせいか各種コネクタの保護用スカートが付いておらず、FDDやATAのケーブルを逆向きに誤挿入して破壊する危険があった。

 何にせよ、全般的な性能ではIntel製チップセットにやや劣る感はあるものの、概ね良好な出来の製品であるというのが当時の筆者の感想で、これなら98からATに乗り換えるのも悪くないかもな、と思った覚えがある。


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