X1turboZ3(CZ-888C)

 ある関東出張の折り、しばらく行ってなかったT-ZONE東ラジ店(今はもうないですね。地下1階にあったお店です)にふと立ち寄る気になりました。裏口から入って階段を下ると、その店では見なれぬ黒いマシンが鎮座していました。見ると「X1turboZ3」。価格は9700円。こりゃ安い中古だ!と思って「中古ですよね?」と聞いたら「新品ですよ」との返事。数分後、お金を払い送り先をメモしている私の姿がありました。

 出張から帰ってから何人かにこのことを教えると、2人が早速注文しました。向こうが送り先のメモを紛失したので私の所への到着も少し遅れましたが、無事入手することができました。まぁ新品といっても在庫整理品みたいで、保証書は入っていませんでした。

 Z3はturboシリーズの最終モデルですが、いろいろ省略されているところがあります。そのもっともたるのは拡張FDD。3.5インチドライブも取り付けられません。またデジタルRGB出力もないですし、前面ポケットの中も減っていたものがあったはずです。
 起動選択となるディップスイッチも中に入り込んでしまい、極端に操作性が悪くなってしまいました。

 でも良いところもあります。それはCRTC。これまでX1シリーズはCRTCにHD46505(MC6845)を使ってきましたが、なんとZ3には富士通のピンコンパチ品であるMB89321が採用されています。これは独自の4分割モードやスムーススクロール機能があるので、Z専用のスムーススクロールとは別に使えたりするんじゃないの? と思ってたんですが…下で写真で紹介するようにMB89321Bというバージョンで、これは拡張機能のない6845フルコンパチ(使用できるクロック周波数は向上している)品でした…残念。

 このZ3には一時期拡張I/Oボックスを経由してSASI HDDと立体視ボードを入れてありました。
 SASI I/FはI/O誌に掲載されたやつで、ボードはわりとあっさり動かすことができました。ただ最初に買った10MBのHDDがアクセスランプ点きっぱなしでどうしようもなく、予算オーバーでしたがその記事にも載っていた(もっと言うとその著者が買った店と同じMSL…ああ、この店もないのか)20MB HDDを買いました。

 実はボードの方も部品が一つだけ(LS642-1)が手に入らず、電流値は違うものの論理は同じLS642を使って組み立てたのですが、最初のうちは動いていたものの数ヶ月で動かなくなりました。HDDについていた98用I/Fにその部品があったので、抜き取って使ったところまた動くようになりました。その後はまた壊れるようなことは起こっていません。


X1turboZ3の内部

 X1turboZ3をめぐる噂はいくつかありまして、そのうちのひとつは上でも述べているCRTCの話。そして、さらにはGRAMの容量が増えているという話もあるのです。もしそうだとしても具体的にどうすればアクセスできるのかさっぱりわかりませんが、なかなかにミステリアスです。
 というわけで、どこまで真実に迫れるか、本体基板を見てみることにしましょう。

 まずは基板全景。下の茶色い基板はデジタルテロッパや前面スイッチ関係の基板で、緑の大きい基板がメイン基板です。カスタムLSIのおかげで、1枚の基板に全て搭載できるようになりました。

 シャープカスタムと思しき番号がついているLSIは次のようなものが搭載されていますが、なんともよくわかりません。場所の近さや共通のパターンが通ってるということで見当を付けてみましたが…。

IX1054CE CG ROM
IX1213CE メインメモリ、バンクメモリ
IX1214CE 周辺I/O
IX1215CE 画面関係(キャプチャ)
IX1216CE 画面関係(テキスト/漢字VRAM)
IX1217CE 画面関係(グラフィック)
IX1218CE BIOS ROM

 まずは右上から。

8K×8bitのSRAMです。PCG用とテキストVRAM用に使われているものと思われます。いわゆる6264と同種のSRAMですが、細身のパッケージが使用されています。
CG ROMと思われます。
漢字ROMと思われます。この時代ですから、第1・第2水準の両方を収容していると思われます。
PCGや漢字を含むテキストVRAM機能をまとめていると思われます。
6bit A/Dコンバータです。画像取り込み機能で使用されます。

 次いでその下、基板の右下です。

いわずと知れた、CRTC。これまでのHD46505に代わり、コンパチのMB89321が採用されています。MB89321にはAとBという2つのバージョンがあり、Aバージョンだとレジスタコンパチ・コマンドコンパチでありながらスムーススクロールと4画面分割をサポートしたりするのに対して、Bバージョンはそういった拡張はなし。ずっと型番だけ見て「隠し機能だ!」とワクワクしてたんですが、よくよくデータシートを確認するとBバージョンってそういうことだったという…。それはともかく、富士通のMB893xxという一連のLSIは、当時のポピュラーな機能LSIを総ざらえで置き換えようというような、野心が見え隠れする面白いシリーズでしたね…。
64K×4bitのDRAMです。CRTCの近所で、6つ(2×3)あるということはGRAMでしょうか。でもGRAMだと全部で96KBしか必要ないのですけど、倍の192KBありますね。DRAMなので、配線しないことで半分にすることはできない(ロー/カラムで共用するから、1本減らすと1/4になる)ことを考えると、レジスタの設定次第で400ラインモードの第2ページとか、4096色同時表示モードの第2ページが使用できる…?
グラフィック機能関係と思われますが、表示はCRTCがやってくれると考えると、画像取り込みとの橋渡しをするのが主な機能と言うことになるのでしょうか?
画像取り込み機能をまとめていると思われます。
いきなり正体不明のチップなんですが…どうやらRAMらしいです。他のメモリの使われ方も合わせて考えると、パレットに使われていると考えた方が良さそうです。
910ワード×8bitのNTSC用ラインバッファです。テロッパにスーパーインポーズ表示データを送り込むのに使われていると思われます。

 今度は基板の左上、パソコンとしての心臓部ですな。

ヤマハのAY-3-8910コンパチPSGです。ジョイスティックのI/Fにも使われます。
タイマ・カレンダICです。昔からこれでしたっけ?
64K×4bitのDRAMです。影の落ちているところにもあって、4つ並んでいます。メインメモリと、バンクメモリに使われていると思われます。GRAMと型番が微妙に違うのは謎です。
BIOS ROMと思われます。
周辺I/Oをまとめていると思われます。

 フロッピーのケーブルが外せないので、左下は2枚に分けています。まずはフロッピーコネクタと拡張スロットのコネクタの近所から。

メインメモリとバンクメモリの制御をしていると思われます。

 最後に基板の左下、FDCとFM音源。

VFOです。ほぼ無調整で使用できる、富士通のヒット製品ですね。
FM音源の出力に使われるOPアンプです。

 ということで、やっぱりメモリ関係にいろいろと変化がありますね。しかも噂どおり、グラフィック関係に隠し機能がいろいろありそうです。これがアクセス可能だと面白いんですがね…。

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