PC-1600K

 至高の名機というべき、Z80A搭載ポケコン。というか、実はPC-1350のあたりから「ポケットというには大きいよね」ということからかある程度以上の筐体のポケコンを「ポータブルコンピュータ」と呼称するようになりました。それはある時期から販売戦略上の都合からか再び統一されるまで数年間続いたのですが、PC-1600Kはその最後の機種でして、PC-1501なんかと同じ大きさにかかわらず最後までポータブルコンピュータと呼ばれることになってしまいました(PC-1600Kをベースとする実行専用機PC-1605Kは少し後に出ただけあって、ポケットコンピュータと呼ばれています)。
 そう、PC-1500/1501と同じ大きさにも関わらず、大型液晶を搭載。どうしてこんなことが可能なのか?とPC-1501と比べてみましたが、ファンクションキーを小さく、アルファベット部は縦にピッチを詰めて空間を確保していますね。その反動というわけではないでしょうが、テンキー部はピッチを広げてあります。あと細かいところでは、SHIFTキーを左下にも増設して使い勝手を向上させる工夫もありますね。
 電卓から進化してきたからこその特徴を持ち成功してきたポケットコンピュータではありますが、PC-1600Kはそれまででもっともパソコンに近い思想のもとに設計されたという印象があります。ざっと挙げれば、
  • Z80A搭載。
  • バンクメモリによる大容量ROM・RAM搭載。
  • 漢字表示と文節変換入力をサポート。
  • オプションでフロッピーをサポート。
  • 単なるシリアルではなくRS232Cをサポート
というようなところ。まぁ他のポケコン自体も高機能がたたってこの時期にはすでにバンクの嵐だったはずなんですが、PC-1600Kの場合にはメモリモジュールの取り付け方によってRAMの埋まり方が変わる(というのがマニュアルに解説されてある)とかそもそも最大RAM容量がZ80のメモリ空間を超えているとかありまして、それがより目立ったということでもあるんですけどね(Z80使ってるならマシン語で動かそうと思うから、メモリマップを気にするのも当然なんですが)。
 今でこそポケコンと同等の大きさのPDAでは日本語表示など当たり前になってしまいましたが、この当時ではとても信じられないことでした。漢字ROMそのものがMZ-1R13のように拡張ボードにやっと収まるくらいのものであるという印象があるくらいなのに、大型筐体モデルとはいえポケコンに標準装備されてしまうなんてのはありえない話としか思えませんでした。
 そしてオプションとはいえ文節変換辞書のサポート。この当時はMZ-2500MZ-6500など、シャープのワープロ「書院」で育てられてきた辞書ROMをどんどんサポートしようという戦略があったようで、「漢字表示するなら」とポケコンにまでサポートが広げられたのでしょう。
 本体右側面のコネクタ類。右端から、SIO、A/Dコンバータ入力、コントラストボリュームの下がRS232C。電池駆動であるポケコンのネックが高い電圧を使用するRS232Cだったわけで、いくらシリアルポートをそなえたところでどうしてもレベルコンバータユニットが必要だったのです。それがPC-1600Kではダイレクト接続できる!
 っとよく見れば、コネクタ形状はPC-1360Kでも使われているものと全く同じ。ハーフピッチの15ピンなんて、いや端子数はともかく、この種のコネクタはありそうで全然手に入らないんですよねぇ。せっかく直接つながるのに…。
 PC-1500/1501とは拡張モジュールの向きが変わった裏面。モジュールは以前のものと同じ大きさで、PC-1500/1501用モジュールも使用できます。取り付けられているのは、左が32KBのRAMモジュール・CE-1600M、右が文節変換辞書モジュールCE-1650M。
 上がPC-1600K、下がPC-1501…ってこの図ではどっちがどちらかわかりませんな。見事に同じ厚さ、大きさ。ある程度周辺機器の互換性をとるためにこの拡張コネクタも基本的にはコンパチ。これだけのパワーアップをしたのに、パッケージングはそのまんまというのは感心するほかありません。
 ところで、Z80Aを3.58MHzで駆動ということなんでその速度に期待したんですが、実際にはものすごく遅いですね…。もっとも最速と思われるPC-G850Vでも1万回空ループが9秒くらいかかるんですから(MZ-2000だと6秒)、ポケコンはちょっと事情が違うのかもしれないんですけど。

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