MZ-1R12
(CMOS RAMボード)

 MZ-80B/2000/2200は"/"キーを押しながらIPLスタートさせると、外部メモリからプログラムを読み込んで実行します。長らく純正では隠し機能同然の存在だったのですが(I・Oデータ機器製の拡張ボードにはBASICを起動させるROMボードがありました)、QDの発売で拡張IPLの起動用に使われるようになりました。このボードはそのちょっと前の時期に純正には存在しなかったEMMの代わりの拡張RAMとしてMZ-700用としても併せて発売されたものです。
 基板右下に見える"MEMO POWER"と書かれたニッカドバッテリにより、電源を切っても記憶を維持できるようになっていました。容量は32KB。アクセス方法はEMMとは異なり、DIPSWによりアドレスを変えて複数枚搭載できるよう配慮されていたものの、どのBASICからもサポートされませんでした。専らテープいらずのブートデバイスとして使われていたのではないかと思われます。
 ブート機構があるMZ-80Bや2000はともかく、MZ-700でどうするのかというと、バッテリの左にあるROMが$E800番地にマッピングされ、初期化の後に実行されるようになっています。実行されるのはメニュー付きのブートプログラムで、RAMを読み出して実行の他テープからRAMに転送する機能もあります。この機能はMZ-1500/800にて標準装備となったので、MZ-700以外ではROMをスイッチ設定で切り離しておく必要があります。

 バッテリ付きなので、破損防止のため人体アースを指示するラベルがあります。
 購入時に入れられているビニール袋。当時プリント基板は静電気による機器の破損を防ぐため、アルミホイルにくるまれているのが普通でした。これは、万一静電気の高電圧がかかっても基板全体がその電圧になることで実際には電気が流れないようにするためです。
 が、このボードにはバッテリがあってショートさせると燃えたり壊れたりする可能性があるため、このような袋(帯電防止袋だと思われる)に入れられているのです。
 ところで、基板を見るとRAMが8つあるように見えますが、容量は32KB。4KBが8つですか?いやいや、そんな容量のRAMなんてないですよ。8KBだったら8つも載せる必要ありませんし、2KBだったら数が少なすぎます。どうなってるの?
 …の答えがこれ。なんとメモリ二階建てです。アマチュアの工作か、バグ修正ぐらいしかこんなことするのを想像できませんでしたよ。まさか工業製品でこんなことがあったとは…。この一階と二階を接続しているハンダが異常なほど均一なので、何らかの方法で機械的にハンダ付けしたのだと思われます。でもそんな製造装置、あるんかしらん…。
 もう一つ謎なのがこの金具。中はネジが切られてますので、何かを/何かに固定するためのものではないかと思うのですが、その目的がさっぱり分かりません。二階建てメモリをハンダ付けするためのものではないかと思うんですが…。
 なお、二階のメモリの1端子だけハンダ付けがおかしいのは、チップセレクト信号線です。それ以外は共通ということですね。

所蔵品一覧に戻る